-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「マルホランド・ドライブ」
2005年 08月 24日 (水) 18:19 | 編集
 マルホランド・ドライブ

「マルホランド・ドライブ」 ★★★★☆

MULHOLLAND DR.(2001年アメリカ)
監督:デヴィッド・リンチ
キャスト:ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング、アン・ミラー、ジャスティン・セロー、ダン・ヘダヤ、マーク・ペルグリノ、ブライアン・ビーコック、ロバート・フォスター
   ⇒ trailerを観る(Virgin.media.com)
   ⇒ 公式サイト(英語)を見る
   ⇒ Wikipediaの解説を読む
   ⇒ オマージュと評される「サンセット大通り」の記事へ
   ⇒ サウンドトラックを試聴する(Amazon.com)

女の心を一瞬にして悲しく去来する禁断の情念。

 デヴィッド・リンチの最高傑作だと思う。
 マルホランドドライブで起こる事故から始まるサスペンスタッチの導入部は、いきなり観る者を否応無しに映画の中に引きずり込む。非常に奇妙で異様なシーンが次々と眼前に提示され謎の部分も極めて多い。TVシリーズになるはずだった映像の再構成は、様々な解釈を生み出す含みのあるストーリーと生まれ変わり、リンチ流の鑑賞者の心を捉えて放さない不気味な世界観と随所に見られる象徴的なモチーフの効果によって圧巻のミステリードラマとなった。
 全編通して不安感に苛まれる効果的な音楽や、ナオミ・ワッツの演技の冴えなどにも是非注目。
 何とか解釈するにも2回以上観ないと厳しいかもしれないし、リンチの描く非日常のいびつな世界にはまれない人には絶対お薦めしない。しかし映画の魅力とは「どの観客にも理解できるか否か」などという整合性や一般的常識に依存しているわけでは決してないと思う。この作品の中の人間の愚かしさや狂気、情念を感じ取れれば、作品の持つ異様な輝きの魅力におそらく引き込まれることだろう。

 前サイトの感想はこれで終わっていたので、以降は今の自分の解釈を付足しましたw。
尚、リンチのインタビュー記事が読みたい人はこちらもどうぞ。

↓ 以降完全にネタバレ要注意。勝手な解釈なのでご意見等ヨロシクw。


【あらすじの解釈1:殺人が現実に行われ成功したと考えた場合】

前半からブルーボックスを開けるまで、がダイアンの叶わなかった夢(叶えたかった夢)、であり、後半ブルーボックスを開けた瞬間からはダイアンの現実世界、と考えると非常に解り易いと思う。

時系列的に後半から先に解釈すると、ハリウッド女優を夢見て田舎から出てきたダイアンは、映画の主役をカミーラに奪われるものの、カミーラと愛し合うようになる。しかしカミーラの心はダイアンから離れてしまい、女優としての夢も愛も失った彼女は、カミーラの殺人を殺し屋に依頼する。殺人の成功を示す青い鍵を見つけた瞬間錯乱に陥ったダイアンは自殺。

彼女が死ぬその瞬間に見た夢が、前半のマルホランドドライブで起こる事故の場面から始まる世界だ。夢の部分は現実の人間が名前や立場を変えて次々登場するので大変解り難いが、ダイアンの希望的な妄想であるということを念頭において観ると理解し易い気がする。
あくまで夢、なのでベティ(ダイアン)のオーディションが非常に好感触だったり、リタ(カミーラ)はベティを頼りにし望み通り愛してくれたりする。それはベティの叶わなかった願いなのだろう。

ダイアンの死体をベティとリタが発見したことにより、夢は覚醒に向かって走り出す。クラブシレンジオの泣き女の歌はまさにダイアンのカミーラへの思慕の象徴そのもので映画の中で最も切なく悲しいシーンだ。

   ・・・あなたに会っただけで
   また私は涙にくれる
   でもこれは本当のこと
   貴方の愛は冷めてしまった
   だから私は永遠に
   貴方を慕って泣き続けるだけ・・・

シレンジオの司会者が告げる「これらは何もかもまやかしです」という言葉を聞いたときベティは激しく取り乱すのだが、彼女はこの世界が夢であった事を悟ったのだと思う。(ダイアンもカミーラも既にこの世にはいないということも、二人が無意識のうちに悟った、のかもしれない)
そして覚醒に向う為にブルーボックスが出現し、箱が開けられて場面は現実の世界へ戻るのだ。


【残された謎の勝手極まりない解釈】

1.ブルーボックス
現実と夢の世界の境界線となるものだが現実世界のものではないはず。
それを開ける行為が夢の終焉・覚醒を示すと考える。


2.醜悪な顔の浮浪者
これがまたよく解らないのだが(脂汗)今は、「ダイアンの悪意」の象徴なのではないか、と解釈している。ダイアンはカミーラの愛を失った為に彼女を憎悪し殺人を企てる。結局はそれが彼女自身の精神の均衡を破綻させてしまうことになるわけだが、彼女は愛する者を死に追いやってしまった(と、少なくともここでは思い込んでいる)のである。それ故に真っ黒に汚れた顔で夢の中に登場してくるのではないだろうか。

映画を観た当初納まりがいいと考えたのは「非現実」「夢」の象徴という理解だ。しかし映画の半分は夢の話なのでこれだけではちょっと安直かもしれない。
ダイアンの夢の中で、ウィンキーズという店にいた男が「夢の中でしか決して見たくない恐ろしいものに会った」と言う件がある。その後実際に男を見て卒倒するという場面があるのだが、そこから解釈するとあの浮浪者は夢の中の存在ということだろう。
ダイアン自殺の直後のシーンにも出てくるが、ダイアンが死ぬ時に見る夢の話がそこから始まる、と考えればまぁ出現も頷けなくはない。

もしくは殺しが実は失敗していて、カミーラがあんななっちゃったのか(爆)とも考えたりしたが、そこまで荒唐無稽な話になると映画全体のストーリーが崩壊しそうなのでそれ以上の想像はやめておくw。ラスト近くの浮浪者シーンが、自殺したダイアンをドロドロになったカミーラが見つめていた、としたらある意味ホラーだしw。


3.笑う老夫妻
これ怖かったw。
ブルーボックスの下からミニサイズで出てくるということは、この時点で二人は非現実(夢)の存在だと思われる、彼等はダイアンの夢でも最初に出てきているし。
ダイアンが田舎から期待を抱いてやってきたのに、夢破れ殺人まで犯してしまった(妄想の中での殺人という可能性は最後に触れる)罪悪感や挫折感の皮肉な象徴と解釈。


4.カウボーイ
解釈するキーはカウボーイの「うまくいけば私と1度しか会わないですむ」と「目覚めよ」という言葉だろう。覚醒を促す者とは一体何なのか。この場合覚醒というのはダイアンが死んだ現実への覚醒を示すものだから、死んだ事に気づけ、夢は終わりという意味かもしれない。
そうすると彼は、映画という虚構の世界から、夢と現実の狭間でダイアンだけではなく観客にも何が現実なのかを告げる超規的な存在なのかもしれない。これは映画の中で何もかもまやかし、と告げるクラブ・シレンジオと同様の意味を持つ、とも言える。

5.クラブ・シレンジオ

   「これは全部録音したものです」
   「楽団はいません、全部テープです」
   「これらは何もかもまやかしです」・・・・

この台詞からも夢・妄想の世界であることは確かだろう。
JTNEWSにこれは「死後の世界」という解釈があったがそれも納得行くかもしれない。
シレンジオでベティとリタが泣き女の歌でむせび泣くのは、二人が過去に愛し合い、結果悲しい末路を辿ったことを無意識に気づいた(覚醒を促された)のだと理解できる。

   「シレンジオ、お静かに」

この台詞は禁断の恋に落ち、結ばれることのなかった二人の女の魂を安らかに眠らせてやろう、という鎮魂の意味なのではないだろうか。

! ただここまでの解釈は現実に殺人が企図され成功したものと考えた場合である。


【あらすじの解釈2:殺人も妄想であると考えた場合】

果たしてブルーキーが殺人の成功と断定できるか否か?夢の中では殺人依頼を受けた男は何度か失敗をしている、それは何を意味するのだろう。そして冒頭シーンの事故からのカミーラの生還。これは単にダイアンが心の奥底でカミーラに「生きていて欲しい」と願う思いを象徴しているだけなのだろうか。
つまりもう一つの解釈としては、殺人依頼からしてダイアンの妄想ではないか、ということだ。即ち実際にカミーラは殺されなかったし、このストーリーはハリウッド女優として成功する理想に破れたダイアンの妄想と現実の錯綜と、厳しい現実への覚醒の話であるとも考えられなくはない。
シレンジオでの二人のシーンは、カミーラとダイアンが愛し合っているというダイアンの希望的な妄想の形であり、「まやかし」という言葉によって非現実を表象しているのだろう。
但し管理人はエピソードと伏線を考えた場合、最初に述べたあらすじの解釈1の方が整合性があるように思うがどうだろうか。


【まとめ】
解釈してみると夢にも恋にも破れた女の哀しみが全篇に散りばめられた作品である。煌びやかな銀幕のスターとなって映し出されるシーンが虚ろにフラッシュバックし、さながらハリウッドの映画界の裏側で挫折して堕ちていく者達の慟哭が聞えるかのようではないか。「サンセット大通り」のラストシーンとも重なる何ともやるせなく哀しい場面である。

   「楽団はいません、全部テープです」


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表題作マルホランド・ドライブ、ジョランドー等の情感漂うメロディと共に、怪しく不気味な雰囲気を湛えるチューンやキッチュなポップティストを織り交ぜ、リンチのセンスが散りばめられた一枚。

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