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The Door into Summer
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「悪夢探偵」
2007年 01月 18日 (木) 00:01 | 編集
悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック 悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック

「悪夢探偵」 ★★★★

NIGHTMARE DETECTIVE (2006日本)
監督:塚本晋也
脚本:塚本晋也
キャスト:松田龍平、hitomi、安藤政信、大杉漣、原田芳雄、塚本晋也
エンディングテーマ:フジファブリック 「蒼い鳥
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『ああ、いやだ、ああああ、いやだ、ああいやだ。』
テーマも映像もヘヴィで激烈、徹頭徹尾塚本晋也カラーの作品である。うっかりタイトルに騙されて軽いタッチの探偵物を期待して観ると裏切られるぞ、でもエンタメですからお間違いなくw

一言で言うならエンターテインメントとしてはグロ重過ぎだろう。本気モードの塚本作品に免疫がない人にはショックかもしれない、だがこの作品にはどうしても生身の痛みが必要なのだ。

ストーリーは他人の夢の中に入ることができる青年と、猟奇連続殺人の担当刑事が出会った悪夢の恐怖を描くもの。モチーフは今敏監督の「パプリカ (原作 筒井康隆)」や、宮部みゆきの「ドリームバスター」によく似ている。だがこの悪夢が「死への衝動」に突き動かされたものである点が本作の特徴であり、この作品のテーマの重さに直結している。
塚本監督本人が演じる狂気の犯人は悪夢探偵と同様に他人の夢に入り込んで、口先では死を望んでいたはずの自殺志願者を逃れられない本当の「死」の恐怖に陥れるのだ。即ち現代社会が今まさに直面する安直に見える自殺や殺人という「生」の軽視に強烈なアンチテーゼを投げかけ、現代の人間の心に潜む深層心理を本作は逆説的に映し出して見せる。

思うに塚本監督の「鉄男」や「東京フィスト」「バレット・バレエ」等の一連の作品に共通するものは「生」というエナジーへの執着だと思う。「都市と肉体」というテーマを常に注視してきた塚本作品だが、彼の作品にいつも感じるテーゼとは、日常生活に埋没して人は本当に生きていると言えるのか?生きているということはどういうことなのか?そういうシンプルな問いかけだ。
生身の肉体を貫く痛みと暴力的な生への衝動、都会の生活で失われたかのように見える「生」のポテンシャルを塚本は常に追求してきたのではないだろうか。
そしてこの「悪夢探偵」は、「死」の本当の恐ろしさを描く事で今まで監督が提示してきた「生」への拘泥をより鮮明に描き出しているように感じる。エンターテインメントとしての外郭を持ちながら、その実この作品が包括する問題はあまりにも深くて重い。hitomi演ずる刑事の「いつからなの?いつからこんな風になってしまったの?」と呟く言葉に、我々自身ですら陥る可能性のある闇のスパイラルに気づかされて愕然とするのだ。

「鉄男」や「ヒルコ妖怪ハンター」のあの何者かが迫って来る圧倒的なスピード感が悪夢という人間の無意識の中で再現され、現実と夢の交錯する映像が面白い。「HAZE ヘイズ」から続く、人の“精神或いは意識世界”に合わせた焦点が今後の塚本作品では中心になっていくのだろうか。

hitomiの起用については非常に話題性はあるし、一筋縄では行かないキャラクターを持つヒロインとしての存在感自体はそう悪くないと思う。勿論今後シリーズ化するのであれば台詞廻しの難は何とか克服して貰いたいところだ。
だがそれにも増して松田龍平が素晴しい魅力を発揮していることを特記しておきたい。
「あぁいやだ、あぁぁぁいやだ」・・・幼い頃のトラウマを抱え、他人の悪夢を共有する能力を忌み嫌っている苦悩の青年は、悪夢探偵と呼ぶにはまだ早い孤独なヒーローだ。未だ苦悩の全容さえ明らかにされないままの謎の主人公に、彼の繊細な面差しが非常に合っている。正直このヘヴィな塚本作品に彼がこれ程マッチするとは思っていなかったのだが、作品のシリーズ化は俳優松田龍平にとっての大きな転機にもなる可能性を秘めているのではないかと思う。

エンディングテーマはフジファブリックの「蒼い鳥」。
どうにも弱くて卑屈で駄目な奴かもしれないが、時代の重荷を背負って生きることを余儀なくされた新しいヒーローのテーマにぴったりの歌だ。hitomiがどう見ても上手くないし塚本さんは相変わらずエキセントリック、悪夢探偵は殆んど活躍せずようやく自身のアイデンティティーに覚醒したばかり、おそらく評価は大きく割れるだろう。だが自分はこの熱い本気モードの塚本作品を絶対に否定したくない、生きることに或いは死ぬことに迷っている多くの人間への監督のメッセージを感じつつ次回作に大いに期待したいと思う。 
「蒼い鳥」の一部試聴はこちら歌詞はココ

   ◆当ブログの塚本晋也監督感想LINK
     ・ HAZE
     ・ 六月の蛇 ★★★★
     ・ ヴィタール ★★★
     ・ バレット・バレエ ★★★
     ・ 双生児 ★★★
     ・ 東京フィスト ★★★
     ・ 鉄男 ★★★☆

   ◆松田龍平出演作品感想LINK
     ・ 青い春 ★★★★☆
     ・ ナイン・ソウルズ ★★★
     ・ 恋の門 ★★★☆
     ・ NANA ★★★
     ・ 乱歩地獄 ★★★
     ・ ギミー・ヘブン ★☆


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■サウンドトラック
悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック 悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック
   ⇒ 全15曲の一部試聴・DLは此方で可能

■エンディングテーマ:フジファブリック
蒼い鳥 蒼い鳥

■ノベライズ
悪夢探偵 悪夢探偵

■塚本晋也監督作品
六月の蛇鉄男~TETSUO THE IRON MAN~東京フィスト
バレット・バレエヴィタール スタンダード・エディションヘイズ/HAZE-Original Long Version


■記事内紹介作品
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