-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


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「隠された記憶」
2007年 01月 14日 (日) 21:51 | 編集
隠された記憶 隠された記憶

「隠された記憶」 ★★★★

CACHE、HIDDEN (2005年フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア)
監督:ミヒャエル・ハネケ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
キャスト:ダニエル・オートゥイユ、ジュリエット・ビノシュ、モーリス・ベニシュー、アニー・ジラルド、ベルナール・ル・コク、ワリッド・アフキ、レスター・マクドンスキ、ダニエル・デュヴァル、ナタリー・リシャール、ドゥニ・ポダリデス、カロリーヌ・バエル
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見えない悪意の恐怖と、葬りたい記憶を抉り出される苦痛と。

人間の心の隙に不意打ちを喰らわせ、真っ逆様にどん底に陥れる最低最悪の恐怖を描いた「ファニーゲーム」。あの位見る者の嫌悪感を誘う嫌らしい作品はそうそうあるものではないと思っていた。ミヒャエル・ハネケの「ファニーゲーム」はそれほど強烈な悪意に満ち満ちていたはずである。だが、この「隠された記憶」が描く恐怖はもっとリアルで辛辣でもっと暗い闇に我々を突き落とす。とんでもないスリラーが出てきたものだ。

一切のBGMは排され、進行している映画のストーリー映像とキーとなるビデオ映像が全く同じスクリーンに映し出される。これによって固定カメラが撮るビデオ映像の視点の持ち主が一体誰なのか観客はラストシーンまで考え続けることになる。
もしも誰かに自分の日常を覗き見られていたら?
そしてその理由が自分の中の遠い記憶に由来していたとしたら?

プライバシーの侵害、いつ襲い掛かるともわからない未知の暴力への恐怖、形骸化した家族関係の間隙。この作品の恐ろしさは他人の見えない悪意に脅える現代社会の脆弱さを焙り出していることにあるのだ。「クラッシュ」が見知らぬ他人への恐怖を描きつつ人との絆を信頼に足るべき砦として描いたのに比べ、この「隠された記憶」は一見平穏で理想的な家族の中に潜むどうしようもない闇を映し出してみせたのである。

目の前で人が死に、徐々に記憶の傷痕が紐解かれていく。神経を逆撫でされる生理的な嫌悪感と共にじわじわと追い詰められる不安、そしてエンディングで見え隠れする悪意の正体に戦慄を覚えないではいられない。真実は果たして何処にあるのだろう?
単純に推論することは簡単だ。【以下ネタバレだが作品にとってこれが重要なファクターではない
ラストシーンの長回しを注意深く見ていると主人公の息子ピエロとアルジェリア人マジッドの息子が学校の前で何事か話していることに気づくだろう。夏の日差しの下のこのシーンは時系列的にはオープニングに来るべきものと考えると辻褄が合うのかもしれない。即ち父親が受けた幼い頃の迫害を聞いていた息子とピエロが繋がってビデオ撮影が行われ、夫婦を恐怖に陥れていたのではないかということだ。自殺したマジッド自身がこの事件に全く関与していないのか否かそれは解らない。マジッドの息子に父親のやましい過去を聞いたピエロが、そんな父親や浮気をしている(?)母親の偽善に疑問を感じ、復讐に加担したのか。だがこれもラストシーンから考えられ得る推論に過ぎない。そして犯人探しが重要な意味を持つ作品でもない。
我々が感じるべきは姿の見えない暴力に脅えなければならない殺伐としたこの社会そのものなのだから。

思うにこの見えない悪意は「ファニーゲーム」以上に我々にとって身近な問題ではないだろうか。誰もが聖人君子ではない、人にはやましさを感じるような心の傷痕が大なり小なり必ずあるだろう。見えない暴力がそんな忘れたい過去の瑕疵を薄皮を剥がすように苛む。そして人は悪意に対しては往々にして、保身の為に過剰な防衛に走ってしまいがちなものだ。
主人公がカーテンを引いて真っ暗にした部屋の静寂は、未来の平穏どころか忍び寄ってくる不安と危険を予感させたまま終幕に向う。あの暗闇はそのまま現代社会の陥穽を象徴して観る者を圧倒するのである。あまりにも淡々と語られた恐怖にただただ絶句させられた、必見である。

2005年カンヌ国際映画祭監督賞受賞、及びヨーロッパ映画賞作品賞・監督賞受賞作品。人種差別問題を匂わせている要素も興味深い、これを観たフランス人にとってはやましさという響きはおそらく我々日本人が感じる以上の重さがあるのだろう。
   
   ◆参考資料:アルジェリア
   ◆当ブログのハネケ作品感想LINK
      ・ ピアニスト ★★★☆
      ・ ファニーゲーム ★★★★


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■ミヒャエル・ハネケ監督作品
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