-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「硫黄島からの手紙」
2007年 01月 07日 (日) 21:48 | 編集
硫黄島からの手紙 オリジナル・サウンドトラック 硫黄島からの手紙 オリジナル・サウンドトラック

「硫黄島からの手紙」 ★★★★

Letters from Iwo Jima(2006年アメリカ)
監督:クリント・イーストウッド
原作:栗林忠道『「玉砕総指揮官」の絵手紙
脚本:アイリス・ヤマシタ
キャスト:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、松崎悠希、中村獅童、裕木奈江
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「いつの日か我らの功績が讃えられる時が来る」
最期の時を迎えるに辺り栗林中将が吐露した思い。
硫黄島の日本兵が本土に残る日本人の安泰を願い戦い続けた地獄のような日々を、我々はこんな形で知ったのだ。クリント・イーストウッドというアメリカ人監督が撮った映画によって。

ホテル・ルワンダ」に引き続きこの二部作でも、嫌というほど自分の無知を思い知らされた気がした。しかもこれはたった数十年前の我々の前の世代の日本人の話でもある。この優れた二部作がハリウッドから発信されたことにまず純粋に賛辞を贈りたいと思う。

イーストウッドの中立的な視座はかくも徹底して最後まで少しもぶれることがない。家族からの手紙を胸に愛する者の為に生きて帰りたいと願う兵士、監督の描いた日本兵にもアメリカ兵にも、結局戦場におけるヒーローは一人として登場することはなかった。
プロットはタイトルとなった栗林中将が家族に向けた手紙を基に展開され、映画自体はこれまでの多くのハリウッド作品に見られたような偏見と誤解に満ちた日本人像を排し、極めて日本人の当時の状況と心理状態に寄り添う作品になっていると思う。キャストも殆んどが日本人、全編日本語で描かれたハリウッド発の「日本映画」だ。

実は自分は三週間以上この作品の感想を書かなかった、否、書けなかったのだ。それはこの作品の素晴らしさを認識しつつも抗えない不満が残ったからである。そしてその不満が何に由来するのかはっきりと見えてこなかったのだ。敢えて言うならば「ミスティック・リバー」を観た時の漠然とした不満である。それはイーストウッドという監督の作家性にも言及しなければならないことであるが、過剰なものを抑制しクールな客観性に貫かれている彼の作品に感じることの多い映画との距離感でもある。その特徴は時に映画のドラマ性という部分での脆弱さ、或いは核となる要素の見え難さにも繋がっているように思う。
また硫黄島の戦いの時系列的な詳細や、日本人の心情等、若干日本人である我々には物足らない部分もあるように感じたことも確かだ。戦力面では圧倒的に不利だった日本軍が、数日で終わると目論んでいた米軍の行く手を阻み、36日間も持ち堪えたその事実は、この映画ではなく他の資料から知るべきことなのかもしれないが、やはり戦況と特有の国粋主義が働いていたであろう日本人の心理に触れる描写にはもう少し踏み込んで欲しかった思いも残る。勿論それに拘泥注視することによって作品の本意から外れる可能性もあり、イーストウッドの選択はおそらく正しいのだろうけどw。

意外であった点は「父親たちの星条旗」と重なるエピソードやシーンの少なさであるが、おそらくこの点は評価が分かれるところかもしれない。所謂ハリウッド的な演出であれば二作に共通するキャストを設定したり、もっと接点を増やすのが常であろう。しかしイーストウッドはそれを敢えて行ってはいない。
「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」の二本を並べて初めて、観客は様々なシーンに二つの国の兵士達の姿を想像する。おびただしい数の米軍の上陸に始まり、擂鉢山への星条旗の掲揚、塹壕で自決した日本兵。そして「衛生兵を狙え」というたった一言の台詞にも我々はジョン・ブラッドリー(ドク)の姿を思い浮べることができる。ラストシーンで西郷が見つめた夕日はドクが見た美しくも儚いあの風景に繋がっているのだ。
監督は二つの作品をオーバーラップさせるという自然な行為を、映画よりむしろ映画を観る我々に託したのであろう。接点を持たせないことによって、互いを知らない者同士が戦わなければならない戦争の哀しみがより鮮明に焙り出されることになったのではないだろうか。

そしてこの「日本映画」を撮った監督がクリント・イーストウッドであるという事実は、何よりもまず踏まえるべき前提である。史上初の硫黄島ロケを敢行し、戦争映画が陥りがちな主観的偏りを見事に排する。双方の国から描くという斬新なアプローチやクールで中立的な視座は、彼だからこそ為し得た偉業であろう。言い換えれば、日本人ではないという限界があるからこそ彼が見い出した賢明かつ完璧な方法なのだ。
不毛な戦争の悲惨な現実を赤裸々に描き出し、国家によってもたらされた戦争が一人の人間の人生をどれ程狂わせるのか、結果的にこの二部作は見事に並立して戦場の兵士たちの心に寄り添ってみせたのである。
メディアミックス作品に浮かれて、安っぽいTVドラマ紛いの作品が溢れ返る日本映画に、例え硫黄島を撮ったとしてこんな着地点を見い出す事ができるとはとても思えない。イーストウッドは黒澤明に撮って欲しかったと漏らしたらしいが。

届く事のなかった数百通の手紙、ラストシーンに心が動かされない日本人はおそらくいないだろう。
イーストウッドの手腕に改めて敬意を表し、心から感謝の言葉を贈りたいと思う。

   ◆参考資料
     ・ 硫黄島について
     ・ 硫黄島からの手紙
     
   ◆当ブログ内のイーストウッド監督作品感想LINK
     ・ 父親たちの星条旗 ★★★☆
     ・ ミリオンダラー・ベイビー ★★★★☆ 
     ・ ミスティック・リバー ★★★☆
     ・ ブラッド・ワーク ★★★
     ・ 許されざる者 ★★★★
     ・ イーストウッドのオスカー作品考察



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■原作本
「玉砕総指揮官」の絵手紙 「玉砕総指揮官」の絵手紙

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