-何の参考にもならない映画評-
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「父親たちの星条旗」
2006年 11月 13日 (月) 18:17 | 編集
「父親たちの星条旗」オリジナル・サウンドトラック 「父親たちの星条旗」オリジナル・サウンドトラック

「父親たちの星条旗」 ★★★☆

Flags of Our Fathers (2006年アメリカ)
監督:クリント・イーストウッド
製作:スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ、クリント・イーストウッド
原作:ジェームズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ 「硫黄島の星条旗
脚本:ウィリアム・ブロイレス・Jr、ポール・ハギス
キャスト:ライアン・フィリップ、アダム・ビーチ、ジェシー・ブラッドフォード、ジェイミー・ベル、ポール・ウォーカー、バリー・ペッパー、ロバート・パトリック、ジョセフ・クロス、スターク・サンズ、ニール・マクドノー、メラニー・リンスキー
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たった一枚の写真に秘められた真実が語る戦争の光と影。
これはイーストウッドが贈る総ての戦争被害者への鎮魂と追悼の物語でもある。

まずシンプルに硫黄島の激戦と写真の秘話に驚かされる。
硫黄島に国旗を掲げた写真の裏側に、軍事費捻出に四苦八苦する当時のアメリカの経済状況や、真の英雄と呼ばれるべき兵士達が存在したという事実には、新鮮な衝撃があった。またモノトーンに近い映像で描かれる硫黄島の戦いは「プライベート・ライアン」を彷彿とさせる凄まじさで、あたかも今までに観てきたような反戦映画の様相を呈する。
だが「父親たちの星条旗」は、あの一枚の写真の真実をフィルムに写し撮ることで、英雄に仕立てられた広告塔の兵士達の葛藤に目を向け、アメリカという国家の偽善的な側面を内省的に凝視して戦争の虚しさ、愚かしさを伝えるのだ。

端的に言うならこの物語は、一体誰の為に何の為に戦うのか、或いは戦争が一人の人間の人生にどんな影を落とすのか、ということである。
観る者はこの映画の中で、共に生きる為に戦う戦場とは、国家や人種、貧富や階級など個々の人間のパーソナリティの外郭を構成するものが一気に取り払われ、命と命が剥き出しになって対峙する場所であることを改めて思い知らされるだろう。
戦地に赴く時は愛国心に燃えて意気揚々としていても、現実の戦場はそんな大義名分を振りかざす余裕なんて微塵もない。それが消し飛んでしまうような生と死のギリギリの境界で、兵士は生きる為に或いは同胞の為に戦ったのだ
しかしそんな彼等の思いとは裏腹に、国家に利用され偽りの英雄という称号が彼等を苛み続けた事実を映画は淡々と物語る。必要以上にドラマティックな演出をせずにクールな描写に徹している点は、イーストウッドらしさを感じさせるものだ。

しかしながら映画全体の構成面では多少落ち着かない印象を与える。それは惨たらしい戦場の回想が3人の帰国後の歓迎シーンの中にフラッシュバックとして何度も挿入され、複雑ではないにしろ戦場と帰国後、戦後と細切れに時間軸が動くせいだ。よって物語の語り手は途中で変わり、視点が一つに定まらない。勿論、この構成は生死を賭けて戦う陰惨な戦場の現実と、所詮机上の概念でしかない「戦争」の行方に一喜一憂して手前勝手に士気を鼓舞しようとする国家のエゴやそれに流される民衆とを見事なまでに相対化して、深く傷を負った兵士達の心を浮彫りにしていることも確かであろう。だが若干未整理で散漫な印象を受ける脚本は、鑑賞者が過度にこの作品に感情移入をすることを拒むかのようでもある。このアプローチの仕方はもしかしたら本来この映画が持つべき求心力を失速させてしまってはいないのか、個人的にはそれがもう一つ納得できない部分として残った。
因みに脚本は「ミリオンダラー・ベイビー」でも組んだポール・ハギスと、「アポロ13」「ジャーヘッド」等を手がけているウィリアム・ブロイレス・Jrである。

映画自体の出来とは別のところで、作品のテーマを考える上で忘れてはならないことは、この作品には戦地に赴いた兵士たちへの真摯な追悼の思いが溢れているということだろう。
言うまでもなく「ミスティック・リバー」や「ミリオンダラー・ベイビー」でも感じられたイーストウッドの祖国に対するシビアで鋭利な視線は、ここでもやはり一貫している。アメリカが抱える欺瞞や問題を冷徹に客観視する姿勢はいつもながらだ。だが戦争で苦しんだ人々への慰霊や畏敬という点に注意深く配慮されていることは見逃すべきではないだろう。
戦争映画として突き抜けた普遍性をあまり感じられないのは、9.11以降のアメリカという国家に対するイーストウッドの問いかけを感じずにはいられないからかもしれない。それも踏まえた上で、こうして戦争の真実はそれを知らない者の手で次の世代に語り継がれて行かねばならない、そんなことも同時に再認させられる作品だったと思う。
自分も戦争を史実の一つとしてしか知らず、遠い国境の向こうで起こっている戦いにも今は無縁の世代だ。それでも尚、エンドロールの“英雄たち”の写真は、俯瞰で映し出された硫黄島のあの戦いの日々に確かに生きていた彼等を我々の胸に刻み込む。祖国を、そして大戦の裏側をシビアに見つめた戦争映画として忘れられない作品の一つになることは確かだろう。

そしてこの作品は未だ完結しない。
本作は硫黄島の戦いを日米双方の視点から描いた「硫黄島プロジェクト」のアメリカ側視点による作品であり、12月公開予定の日本視点の「硫黄島からの手紙」と対になるものだ。
全く顔の見えない敵国として敢えて本作では不気味な存在に描かれた日本兵は、「硫黄島からの手紙」によって初めて明らかにされることになる。日本人ではないイーストウッドがいかなる日本を描いたのか、戦う為の拠所がアメリカとは違っていたということも描かれるのだろうか。予告の熱っぽさが少しばかり気になるが公開を待ちたいと思う。
    
   ◆参考資料
     ・ 硫黄島について
     ・ ジョー・ローゼンタール
   ◆当ブログ内のイーストウッド監督作品感想LINK
     ・ ミリオンダラー・ベイビー ★★★★☆ 
     ・ ミスティック・リバー ★★★☆
     ・ ブラッド・ワーク ★★★
     ・ 許されざる者 ★★★★
     ・ イーストウッドのオスカー作品考察


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■サウンドトラック
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■原作本
硫黄島の星条旗父親たちの星条旗


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