-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「ユナイテッド93」
2006年 08月 17日 (木) 03:10 | 編集
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オリジナル・サウンドトラック「ユナイテッド93」 オリジナル・サウンドトラック「ユナイテッド93」

「ユナイテッド93」 ★★★★

UNITED 93 (2006年アメリカ)
監督:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス
キャスト:ハリド・アブダラ、ポリー・アダムス、オパル・アラディン、ルイス・アルサマリ、デヴィッド・アラン・ブッシェ、リチャード・ベキンス、スターラ・ベンフォード、オマー・バーデゥニ、スーザン・ブロンマート、レイ・チャールソン、クリスチャン・クレメンソン、ライザ・コロン・ザヤス、ゲイリー・コモック
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命のギリギリの選択を迫られた時、我々は何を為すべきか。
これは仮説を元にして再現を試みられたユナイテッド93のフィクションだ。勿論9.11という事件の全容を考える為にはこれだけでは足りないこと、また美談としてアメリカの対テロ戦争の一種のプロパガンダになり得る危険性も念頭に入れつつ、壮絶なるリアリティに圧倒される作品である。

監督はあの傑作「ブラディ・サンデー」で、血の日曜日事件をドキュメンタリータッチで見事なまでに再現し描ききったポール・グリーングラス。彼を監督に迎えたことがこの作品の成功の最大のポイントではないかと思う。
作品は、ユナイテッド93の日常的な離陸からハイジャックされて墜落するまでの詳細な描写と、ハイジャック犯の表情、管制や防空司令センターにおけるハイジャック情報への対応の様子を同時平行で交互に映し出して見せるという方法を取っている。さらに大穴が開いて黒煙を上げる貿易センタービルの映像やCNNニュースの状況などが盛り込まれ、同時多発テロに混迷し錯綜する当事者の様子はまさに完璧なるリアリティを携えて観る者に提示されていると言っていい。
事件の臨場感と緊迫感を醸成する手持ちカメラで撮られた映像。乗客の遺族に実際に取材したという生々しく鮮烈な機内のエピソードの数々。そして刻一刻と変わる事件の状況描写。
犯人と乗客どちらかの立場に偏向することなく中立性を保ちつつ描く、これは「ブラディ・サンデー」とほぼ同じ手法である。

しかし一つだけ違うことはユナイテッド93には生存者がいないということだ。実際に機内で何が起こったのかそれを知る目撃証言者がいないということは、あの描写を観客が鵜呑みにする危険性を秘めている。勿論事実以上に感動ドラマとして脚色することも可能なわけで、その点敢えて抑制されたドキュメンタリータッチで作品全体のトーンを統一したことは、ユナイテッド93に起こった事件の重さとそこにある事実を見つめようとする作り手の思いを伝えるには適切な選択だったのではないかと思う。エンドロールで流れるキャスティングのAs himselfの多さも、その姿勢を感じさせられる部分だ。
万事休して暗転したラストシーンで劇場は水を打ったように静まりかえっていた。語る言葉を失うとはまさにこういう事なのだろう、だからこそ一つの仮説であろうとも目を背けず観るべき作品でもある。

9.11に関しては「華氏911」のようなアプローチも為され、昨今では様々な情報が流れて陰謀説やアメリカ自作自演説(下記資料参照)まで飛び交っている。事件の真相に国家間の利害が絡んでいるとすれば、JFK暗殺事件同様そう簡単に真実が白日の下に晒されることはないだろう、その闇はあまりにも深い。自分もこの事件の真実が本作に構築されたフィクションによって総て網羅されているとは全く思わない。
だが、何があろうとあの瞬間に民間の多くの尊い命が失われた事実は決して消えない。そしてあの日突如として交信を絶った旅客機や、崩壊した貿易センタービルにいたのは我々だった可能性がないとも言えないのだ。

ユナイテッド93で果たして何が起こったのか、この映画に描かれていることが真実なのか否か、それはもっと大局的な見地で考察されなければならない問題だろう。
9.11、あの日世界は何を失い何を得たのか。
国家とは、宗教とは、民族とは、一体何なのか。

真実を模索しようとする誠実な姿勢で貫かれたこの作品は、確かに「あれはテロで、テロリストの行為を食い止めたのは乗客の勇気だった」という推測の元に成り立っている、実は極めて政治的だ。機内の描写の真偽如何に関らず、9.11を振り返り今一度冷静に咀嚼して考えることの必要性を想起させてくれる一つの視点、それが本作の最も優れた点であろう。
メディアとしての映画の責任と力を痛感させられたと同時に、事件の真相究明への責任は9.11を見守った総ての人間の手で担われなければならないと改めて感じる。また、このような多分に情報操作の可能性を含みしかも優れた作品を観る際には、我々観客の資質も問われる事を忘れてはならないだろう。
同監督の「ブラディ・サンデー」は日本未公開作品だが此方も実に心を打たれる作品である、興味のある方は是非DVDの鑑賞をお薦めしたい。

  ◆参考資料
    ・ アメリカ同時多発テロ事件
    ・ 華氏911:マイケル・ムーアによるブッシュ政権批判のドキュメンタリー
    ・ 消えたボーイング旅客機:ペンタゴンの謎を追うサイト
    ・ 自作自演説:Loose ChangeAmeba Vision(日本語)
    ・ オサーマ・ビンラーディン     

  ◆このブログ内での9.11関連作品の感想
     ・ セプテンバー11 
     ・ 華氏911
     ・ ランド・オブ・プレンティ


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