■ Title Index : all ア カ サ タ ナ ハ マ ヤ ラ ワ A-Z・数字 監督別 |
■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2006年
07月
21日
(金)
23:35 |
編集

「バレット・バレエ」 ★★★
BULLET BALLET(1999年日本)
監督:塚本晋也
脚本:塚本晋也
キャスト:塚本晋也、真野きりな、中村達也、村瀬貴洋、鈴木京香、井川比佐志、井筒和幸、田口トモロヲ
⇒ バレット・バレエ@映画生活
87分間の生と死の臨界点で繰り広げられる究極の覚醒の物語。解き放たれたものは一体何だ?
「鉄男 TETSUO」「東京フィスト」という作品を経て塚本晋也が辿り着いた暴力という表現の一つの様式美だ。相変わらず塚本晋也は1人で製作・脚本・監督・撮影・照明・美術・編集・主演をこなす、これぞ自主映画と称すべき作品だろう。鮮やかなコントラストで目に飛び込んでくるクールなモノクロ映像。たった一丁の拳銃から暴走し始める「死」への限りない誘惑。退屈な日常を切り裂いて、「死」が「生」を体感させていく。
BULLETとは弾丸、BALLETはバレエのこと、タイトルも意味深だ。
映画は恋人を拳銃自殺で失くした男の心を魅了する「死」と、若者グループがゲーム感覚で暴走していく「死」との並行で描かれる。彼等は皆、自殺した鈴木京香の言葉にある「糸の切れた凧」なのだ。云わば、何を求めて生きればいいのか見失った者同士がギリギリの生と死の臨界点で答えを模索する、そんな話である。ボロボロになるまで傷つき倒れた果てに覚醒したものこそ「生」、生きているという実感なのだろう。
物語は陳腐だが、作品としては極めて繊細なテーマを持っていると思う。それなのに何故かもう一つ突き抜けたパワーを感じられない。自主映画としての強烈なパワーと圧倒的な個性を放っていた「鉄男 TETSUO」に比較しても、どうにも不完全燃焼な行儀の良ささえ匂わせてしまう。
これは偏に塚本演じる中年男と真野きりな演じる死にたがる少女が愛し合うことがないからだと思う。暴力とSEXと愛は根源的な本能の部分で繋がっているせいか、この映画もバイオレンス溢れる世界観であるにも関らず、とてもエロチックな妄想を駆り立てる要素を沢山持っている。だが肝心な主役二人の肉体的な、或いは心理的な触れ合いは全く掘り下げ不足。真野きりなの絵的なキャラクターは悪くないが、最後の最後まで彼女はリアルな存在感が希薄なままだ。半ば「生への覚醒」という飛翔に近い、実に美しいクライマックスに到るまでに、もっと内面からこみ上げる欲望や心の痛みの描写が欲しい。
天才的な才能を持つ監督の一人だと思うし、観る者を画面に釘付けにしてしまう力は文句無しに感心させられるのだが、それだけにこの作品では若干消化不良感が残るのが残念だ。
主演の塚本晋也は冴えない中年サラリーマンが暴力と死に取り憑かれていく衝動を上手く表現している。ほんの1シーン登場する恋人役の鈴木京香の透明感は印象的で、素でやっているとしか思えない井筒監督のヤクザといいハードボイルドな井川比佐志といい、塚本監督の其々のキャラを立てる役者の起用法は絶妙だ。
だがこの作品で最も鮮烈な存在感をアピールしているのは、元Blankey Jet Cityのドラマー中村達也であろう。行き場のない欲望を全身に閃かせながら、不良たちのリーダーを大胆不敵かつ迫力溢れる表情で演じる彼の個性は全く見事と言うしかない。
「夢の中で人殺したって罪になるか? クソ東京、全部夢だよ、夢」
彼の人物像とこの台詞が表象するものこそ、巨大都市TOKYOに蔓延する「現実感の無い生」そのものなのかもしれない。








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