-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「パリ、テキサス」
2006年 05月 25日 (木) 02:49 | 編集
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パリ、テキサス パリ、テキサス

「パリ、テキサス」 ★★★★★

PARIS, TEXAS (1984年西ドイツ/フランス)
監督:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders 
脚本:サム・シェパード、L・M・キット・カーソン
音楽:ライ・クーダー
キャスト:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ハンター・カーソン、ディーン・ストックウェル、オーロール・クレマン、 トム・ファレリ、ベルンハルト・ヴィッキ
   ⇒ パリ、テキサス@映画生活
   ⇒ Trailerを観る

そして、星条旗。

人が人を愛することの意味を語りかける、まるで奇蹟のように切ない映画だ。アメリカという風景を愛して止まなかったヴェンダースが紡ぎ出す至高のロードムービー。

テキサス州にあるパリを探して歩き続ける男。この作品は、総てを捨てて旅に出た男の心の彷徨と一つの愛情の形を描き出す。
映画の前半、愛する息子をも置去りにして消息を絶ったトラヴィスという男は実に身勝手で不器用な存在として登場し、その存在は観る者への謎として提示される。
男が目指したテキサスのパリとは何を表しているのか?物語が進むうちに我々が気づくのは「愛し過ぎる」男の、あまりにも重い情愛である。男が彷徨ったあの荒涼とした砂漠は云わば愛情を見失った彼自身の孤独な心の表象ではなかったか。テキサスのパリに向うという半ば夢想的な逃亡へと男を駆り立てたものが、失った妻との幸福を取り戻したいその思いだったことに、我々は単純には量れない人の心の深遠を感じるのだ。

さらに我々は本作の中の印象的なシーンから、時の流れに隔てられた愛情の行方を全く対照的な形で感じ取ることができる。
その一つは道路を隔てて歩く父と子のショットだ。言葉が殆んど交わされぬまま二人が同じ場所を目指してただ、歩く。だがその映像は少しずつ埋め合わせられていく親子の距離を淡々と鮮烈に描く物だ。離れていた二人の心はいつしか近づき重なり合う。
そしてもう一つはマジックミラー越しの再会のシーンである。
男からは女の姿が見えても、女からは男の姿が見えない、それが意味するものはトラヴィスと妻の心の間に横たわっていたどうしようもない隔たりに他ならない。最愛の対象とすれ違ってしまった愛情、届かない思い。このシーンが暗喩として我々に示唆するものはそんな行き場を喪った悲しみと孤独なのである。
映画の最後で男と女はミラー越しに互いの存在を確認する。堰を切ったように迸るトラヴィスの独白、そして総てを理解したことを物語る女の表情。このシーンはどんなに愛していようとも決して重なり合うことのない愛情の形としての帰結である。
何気ないようでいて酷く心を揺さぶられるのは、このような大胆な演出とシーン構成で、実に繊細な人の心の機微を鮮烈に表現して見せるからだろう。

・・・・空白が空白のまま孤独に輪をかけ傷はいっそう治らない
自分が発見するものが恐い、だがそれに立ち向かわないことはもっと恐い。・・・・

そして映画は女の為だけに生きてきた男が初めて見せる息子への限りない愛情によって締めくくられる。息子に録音して語ったトラヴィスの言葉は彼自身の弱さや苦悩を語り尽くす痛切な懺悔と決心である。即ち愛し過ぎる男の存在は共に暮らすこととは決して対には成り得ない、愛するが故に立ち去るという選択こそが男が家族に残した最大の愛情なのである。
「パリ、テキサス」とはバラバラになった心を拾い集める家族の再生の物語であり、人間の優しさの物語でもあるように思う。

そしてこれ等のシーンを彩る色彩は何よりも雄弁だ。
例えば赤のシボレー、赤のシャツ、それ等に対照されるだだっ広い空間と抜けるように美しい青い空。田舎の風景から都市へと変わっていくアメリカの持つ様々な顔と広大な魅力と共に、画面に散りばめられた青と赤という星条旗の色彩が、様々なショットの中で、男や家族の思いと重ねられて観る者に訴えかけてくることに気づくのは難しいことではないだろう。この作品には、我々の中に根付くアメリカという国が持つ原風景へのオマージュ、或いは自由と独立を謳うこの国の混迷や哀しみを見るような、そんな気がしてならない。

最後に、この作品が包括するテーマの一つとして「家族」という問題が痛切に描き出されている点も挙げておきたいと思う。
弟家族の無為の優しさは、愛し過ぎて傷つけ合い崩壊してしまったトラヴィスの家族との対照として静かな温もりを湛えるものだ。80年代のアメリカが抱えていた、その未来へも大きな闇となってつきまとい続ける「家族」という絆と呪縛。「パリ、テキサス」に浮彫りにされた時代の疲弊を改めて感じないだろうか。
昨年ヴェンダース監督は「ランド・オブ・プレンティ」「アメリカ、家族のいる風景」でアメリカの再生と家族というテーマを扱っている。20年以上前に監督が描いた物語は変わらぬ暖かさで我々が回帰するべき原点を指し示しているようにも思えるのである。

素晴らしい脚本と、見事な撮影、邪魔にならずしかし繊細なギターの音色で哀愁に満ちた世界を作り上げたライ・クーダーの音楽、そして存在感溢れる演技を見せる役者達。それ等総てを収斂して高みに昇華してみせるまさにヴェンダースの比類なき才能の結晶である。
この映画は自分が生まれた年に製作された作品だが、自分にとっていつまでも色褪せることなく輝く傑作のロードムービーだ。
満場一致で1984年カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、並びにFIPRESCI(国際映画批評家連盟)賞を受賞した作品であり、このブログの"all-time favorite"の一本だ。ロードムービーが好きになったきっかけの作品でもあり、本当に素晴らしいまさに「痺れる」名作だと思う、圧巻である。


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■サウンドトラック「パリ、テキサス
パリ、テキサス

哀切なライ・クーダーのギターが心に沁みるサントラ。


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