-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「ヴェラ・ドレイク」
2006年 05月 20日 (土) 00:29 | 編集
ヴェラ・ドレイク ヴェラ・ドレイク

「ヴェラ・ドレイク」 ★★★

VERA DRAKE(2004年イギリス/フランス/ニュージーランド)
監督:マイク・リー
脚本:マイク・リー
キャスト:イメルダ・スタウントン、フィル・デイヴィス、ピーター・ワイト、エイドリアン・スカーボロー、ヘザー・クラニー、ダニエル・メイズ、アレックス・ケリー、サリー・ホーキンス、エディ・マーサン、ルース・シーン
   ⇒ 公式サイト
   ⇒ ヴェラ・ドレイク@映画生活 

罪と罰を描く作品ではなく、家族の絆と赦しがテーマ。予想と違った展開に肩透かしを喰ったが重厚な感動作ではある。

1950年のイギリスにおいて、妊娠中絶を非合法に行ってきた善意の主婦を巡る裁判と、彼女と家族の苦悩と絆を丹念に描き出したドラマである。
見所は、決して悪意ではなく営利目的にも行われていない全くの善意の行為が罪として裁かれていく状況と、ヴェラ・ドレイクという一人の一般庶民とその家族が立ち向かう激動の人生ドラマであろう。
脚本の構成を振り返ると、事件発覚までの前半はヴェラ・ドレイクの人間像と日常生活が中心に描かれ、後半は逮捕から訴追、服役に到るまでの彼女と家族の半ば試練に近い苦悩の日々が描かれている。映画が多くを費やしているのは堕胎問題の是非論や女性の権利、また不条理な裁判の行方といった問題ではなく、ヴェラと家族の間の愛情や信頼であることがわかるだろう。

演出面では平穏な生活が暗転するその強烈なコントラストが印象的だ。
そして何よりもこの映画を支えるものはヴェラ・ドレイクという善良な市民を見事に演じきったイメルダ・スタウントンなのだと思う。彼女の人間像がきめ細やかに表現されていなければ、ここまで重厚な作品に仕上がったかどうか、これはマイク・リー監督の即興的な演出方法(事前に台本を用意しないそうである)とイメルダ・スタウントンの圧巻の演技力の成せる業だろう。家族の心の動揺、失望、悲嘆、そして何よりもヴェラ・ドレイクの苦悩が実に鮮烈に映し出され、エンディングの静かな沈黙では、ヴェラを待ち続け途方に暮れる家族の思いを感じずにはいられない。

この作品が最も優れている点は、無知なる善意が断罪される不条理を生んでしまった社会背景に潜む矛盾を観る者に問いかけるという点だろう。裁判官はヴェラに法律は明快だと告げる。しかしここで我々は、その「明快」なる「善悪」という判断が依存するものが、時代を背負う倫理観或いは宗教観という極めて人間の個人的価値観に左右されるような基準に拠るものである、という現実を目の当りにするのだ。この物語が包括する問題の根は非常に深いものであり、決して過去の話としてだけでなく現代にも相通ずるテーマとして考えるべきところが多い作品であるように感じる。

但し映画自体はこの矛盾を掘り下げるものではない。
堕胎問題の是非論や権利を描く社会派な映画を期待すると、家族の絆という落とし所に違和感を持ってしまうだろう。勿論こうやって文章にして改めて整理して考えると極めて見応えのある作品であることは認めざるを得ないのだが、ヴェラがいかなる理由からあたかも生業のように堕胎の施術を行うに到ったのか全く言及されない点など非常に曖昧さも残る。結局これだけの社会的テーマを包含する作品でありながら、一人の人間とその家族の半ば個人的な問題に着地点を見い出すというその方向性がやはり自分には物足りなかった。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞及び主演女優賞受賞作品。

※参考1950年代イギリスにおける堕胎の実態
公式サイトの解説によれば、この時代のイギリスでは人工妊娠中絶は法律で禁止され、1861年に制定された“いかなる場合でも中絶は犯罪とされ、たとえ医療目的でも、3年から無期の懲役を科す”という法律が適用されていたらしい。1929年に“妊娠・出産が母体の命を脅かす危険があると医師が診断した場合のみ合法とする”と改正されたが、手術費は高額で、貧しい人々は非合法の堕胎に頼るしかないのが実情であった。



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