-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「ぼくを葬る(おくる)」 
2006年 04月 28日 (金) 00:43 | 編集
ぼくを葬る ぼくを葬る

「ぼくを葬る(おくる)」 ★★★★

LE TEMPS QUI RESTE、TIME TO LEAVE (2005年フランス)
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン
キャスト:メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル、マリー・リヴィエール、クリスチャン・センゲワルト、ルイーズ=アン・ヒッポー、アンリ・ドゥ・ロルム、ウォルター・パガノ、ウゴ・スーザン・トラベルシ
   ⇒ 公式サイト
   ⇒ ぼくを葬る@映画生活

いつかは誰しもが迎える「死」、それにどう向き合い選択するのか?
純然たる個としてのシンプルな「死」の形がここにある。

ネタバレ有
オゾン監督の「死についての三部作」第2章に当る本作は、愛する者の死を取り上げた第1章の「まぼろし」に続いて、自分自身の死をモチーフとしている作品である。

若く魅力的な男ロマンが余命三ヶ月と宣告を受け、果たしていかに自らの死を受容していくのか、というのが本作のストーリー。
似たようなテーマの「みなさん、さようなら」や「死ぬまでにしたい10のこと」と決定的に異なるのは、主人公はたった一人で孤独に死に対峙しようとすることだ。「生きる」のように何かをやり遂げようとするでもなく延命治療を拒否した彼が唯一心を開いてその苦しみを打ち明けるのは「似た者同士」の祖母だけ、他の愛すべき家族や恋人、友人、仕事仲間には一切彼自身の余命について語ろうとはしない。ここに描かれるのは、多くの人に囲まれ励まされ死への苦しみの時間を誰かと分け合う、また延命に腐心し生に執着してやり残したことに力を注ぐ、或いは宗教的な救いを求める等、そのどれをも選択しなかった男の「死」なのである。

それ故にここでは彼に与えられる同情や憐憫という感傷よりも、死に向き合った男の中に芽生える孤独、絶望、怒り、そして受容という心の軌跡が淡々と辿られることになる。
そして観る者はその選択への是非を其々に心に留めつつ、改めて問いかけられるのだ、
「死とは何なのか?」と。

死とは自己の肉体と心の喪失だけではなく、他による記憶の喪失であると思う。我々は自分が生きた足跡がこの地上から消えることを恐れ、他から忘れ去られることが怖いのではないだろうか。個としての人間存在であるロマンがこの世界から消えるという事実に向き合った時に初めて、彼は愛する身近な者達をそのカメラに収め、見ず知らずの不妊症の夫婦に対してその精子を提供すべくSEXに同意する。ゲイである彼には自らの子供を生み出す未来は本来想定されないことであろうが、人間として今まで果たさなかった唯一の行為として、或いは彼が確かに生きた証としてそれを選択したのかもしれない。

最期の時が近づいて、何度も記憶の中からフラッシュバックする子供時代の自分自身に導かれるように彼は死を受け容れる。それは幼き幸福な日々を過ごした無垢で純粋なる存在への回帰だ。
あの「まぼろし」で最愛の者の死を受け入れなくてはならない慟哭を鮮烈に解き放った砂浜は、ここでは静寂となって穏やかにロマンの死を包み込む棺となる。
沈む夕陽と共にその生を終え、大地に還る、命を授かったあらゆる生ける者は皆いつかは死を迎えるのだ。
一つの魂が総ての欲望から解き放たれて昇華されていく、そんな単純化の美を感じさせられる作品であり、また、生き方の延長にある死に方というものについて沈思させされる作品でもある。たった一人で死を迎え、自らを葬るという最も孤独で苛酷な選択に向うものでありながら、この作品はとても美しい。81分と短い作品だが、観る者の予想を裏切りながら普遍的なテーマへとストレートにアプローチする、深く心に迫る秀作だと思う。

全篇通してメルヴィル・プポーの苦悩と憔悴、そして悟りに到る表情のクローズアップと三様の性行為が非常に印象的だ。クリアーで怜悧な映像は時にメロドラマチックに流れそうな映画を内省的に客観視して見せる。また唯一心を開いて語り合う存在であるジャンヌ・モローとのエピソードは暖かく心に残り、孤独に満ちた本作の癒しとなる。
三部作の第三章は子供の死を扱うことになるそうだ。監督がゲイということもこのような視点とアプローチになった所以だろうが、久々にオゾン監督の冴えた手腕に感動させられた作品である。
個人的にはこういう死に方の選択は嫌だけどなぁ・・・


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8人の女たち ★★★
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