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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「10ミニッツ・オールダー」
2005年 08月 24日 (水) 12:49 | 編集
10ミニッツ・オールダー コレクターズ・スペシャル 10ミニッツ・オールダー コレクターズ・スペシャル

「10ミニッツ・オールダー」
   「イデアの森」★★★ 
   「人生のメビウス」★★★

「世界各国の巨匠監督が手がけた10分間の短編を集めたオムニバス作品集」。様々な監督の個性を10分ずつ観られるという意味でとても面白い。(DVDではメビウス→イデアの順で全編収録されている)

■「人生のメビウス」
「人生のメビウス」は、どれもイデアに比べればそれなりに解釈しやすい、と思う。全作通して「時間」とその切り取られた時間の断片に息づく「生」と「死」を感じさせられる。
勝手に言わせてもらえばw、「イデアの森」が「時間とは何か?」というおよそ映画でその概念を表現すること自体厳しそうなテーマに行き着いたのに比べ、メビウスは圧倒的に解りやすいということだ。
印象に残ったのは次の3作。

ヴィクトル・エリセ 「ライフライン」
モノクロの静かで穏やかな映像と、切り取られた刹那の生々しさが実に印象的だ。子供の流す血、描かれた腕時計、柱時計がゆったりと刻む時間の中で生のエネルギーが不思議なリアリティを持って迫ってくる。長編が観たいと思う作品だった。
イデア、メビウスを通じて個人的にはこれが最高。

ヴェルナー・ヘルツォーク 「失われた一万年」
若干世界ウルルンが入っている気がしないでもないが、「時間」と「人生」を解りやすく意識させられる作品だと思う。時代から取り残された部族にとって、「文明を与えられた一瞬」とは、1万年の喪失を取り戻すものであったのか、否、その時間を無に帰すものであったのか。目覚まし時計のシーンが印象的で、後で思い返した際に意外にも心に残る作品。

ヴィム・ヴェンダース 「トローナからの12マイル」
ストーリーと展開で言えば普通に面白かったのはコレ。
ドラッグのトリップ感覚とゴールまでのハラハラ感の演出も安定している印象。ロードムービー的なのもヴェンダースらしい。
陳腐ではあるかもしれないが、こういう解り易さを10分で見せられる腕は凄いと思う。

スパイク・リーとチェン・カイコーの作品も独特なタッチでまぁ飽きずに観られる。今一つなのはカウリスマキの作品で、時間と人生のテーマを訴える部分で少し弱い気がした。




■「イデアの森」
とにかく哲学的で理屈っぽい作品が多い。ショートフィルムだからといってオチが全然なくてもいいわけじゃないと思うし。難解なのもまた個性として楽しめるなら意外にはまれる作品だろうと思う。

ストーリーとして楽しめるのはベルトリッチとラドフォード、サボーの作品だけ。
ベルトリッチとラドフォードは設定もタッチも全く違うが、タイムパラドックス的に時間の不思議をモチーフにしている点が共通している。イデアの中では一番取っ付きやすいです。

ベルナルド・ベルトルッチ 「水の寓話」
長い時の輪廻の中では我々の過ごす時間の長さはその断片に過ぎず、一瞬の内の出来事である。まさにその宇宙的な時間の概念を哲学的にかつ解りやすく語った秀作だと思う。水のエピソードとリンクした題名も的を射て美しい作品だ。

マイケル・ラドフォード 「星に魅せられて」
「水の寓話」とよく似ているテーマ。こちらは宇宙からの帰還というSF的なストーリーで訪れた時間経過の差を描く。こんなウラシマ効果的ストーリーはSFでは多いし斬新とは言えないが、イデアのテーマにマッチしている。

イシュトヴァン・サボー 「10分後」
何気ないたったの10分に人生が暗転する様を上手く集約して見せる。面白さではこれがトップかもしれない。

で、対して鑑賞が辛い難解トリオはこちら。
フィギスとゴダールは申し訳ないが意味不明。

クレール・ドゥニ「ジャン=リュック・ナンシーとの対話」
EUの移民問題の討論だが禅問答みたいだし。まさに真剣電車内喋り場、10分間耐久で喋り続けてくれます。内容は理解できないこともないが、このテーマに興味がないとちょっと厳しい。
たとえばEU在住であれば興味や視点もまた変わってくるだろうが。

マイク・フィギス「時代×4」
4分割されたスクリーンでそれぞれのストーリーが多分同時進行しているらしいが、どう理解するべきか今も迷うところだ。一人の人間の心と記憶という解釈でいいのかどうか。わからなさ度合いも高過ぎると退屈だ。

ジャン=リュック・ゴダール「時間の闇の中で」
様々な最後の瞬間を細切れに怒涛のテンポで描く。
「永遠の最後の瞬間」とか、もうこの文字面だけで辛い(泣。
あえて解釈するなら、我々には「最後の瞬間」が常に訪れるが、結局人間の生き死にを超越したものが時間である、ということか。如何様にでも解釈できそうだ、さすがゴダール御大である。
イデアの最後にコレがあるせいで、難解度も大幅UP。インパクトでは当然最高で、一番記憶に残るのも絶対にコレだ。ということはゴダールの一人勝ち?w


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