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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「ラストデイズ」
2006年 04月 06日 (木) 23:45 | 編集
ラストデイズ ラストデイズ

「ラストデイズ」 ★★☆

LAST DAYS (2005年アメリカ)
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:ガス・ヴァン・サント
キャスト:マイケル・ピット、ルーカス・ハース、アーシア・アルジェント、キム・ゴードン(ソニック・ユース) 、ハーモニー・コリン、リッキー・ジェイ
公式サイト

この映画自体は果てしなくつまらない、だが「ラストデイズ」は「GERRY」「エレファント」からの流れを収束する作品である。
「生と死」を語る三部作の最終章は、より明確にガス・ヴァン・サントのメッセージが語られるものとなった。

カート・コベインの最期の2日間にインスパイアされてできたという作品であるがあくまでもインスパイアである。即ちカート・コベインの人生や歌をガス・ヴァン・サント流にアレンジした「GERRY」「エレファント」の世界のリピートに過ぎない。正直なところ余程映画好きか同監督ファンにしかお薦めはできないコアなファン層向けの作品ではあるが、シネマライズで2度この作品を観た上で、以下頭を整理して三つの視点からの感想。

一つの作品として観た「ラストデイズ」
カートの死の瞬間を彷彿とさせるブレイクというロックスターの最期を淡々と追い続ける作品である。外部との接触を拒み、何事か呟きながら半ば狂気を秘めた表情で森を徘徊しギターをかき鳴らす男の姿は孤独そのもので酷く悲痛だ。
だが、映画で描かれるのはそんなブレイクの最期の姿のみ、彼のキャラクターやその背景への言及等は殆んど具体的に描写されない為に、カート・コベインの最期にインスパイアされたあくまでフィクションとは言いつつも、Nirvanaの知識がなければその孤独と苦悶の理由が観客には容易に理解し難い作品でもある。

三部作の最終章として観た「ラストデイズ」
まず第一にこの「ラストデイズ」は、ガス・ヴァン・サントが「GERRY」「エレファント」で描いてきたものと同じ生と死をテーマにした作品だということだ。三部作というよりは最早モチーフを変えた同じ作品と言ってもいい。
マイケル・ピットがギターをかき鳴らしながら歌う"Death to Birth"で語られた「誕生から死までの長い旅路」と孤独。この曲には「ラストデイズ」だけではなく3作品に共通したメッセージが織り込まれているように思うのだ。
歩き続けた先にある「生」と「死」。通常人はそれを能動的に自覚しながら生きるという行為はしない。だが今歩くというその行為ですら予期せぬ「死」への一瞬であり、「死」までの旅路が「生」なのだというメッセージが痛切に伝わってくる。
また3作は表現方法も非常に共通点が多い。登場人物の背景は殆ど語られることがなく唐突に本題に入る脚本、ひたすら歩き続ける彼等を背後から或いは横から執拗に追い続けるカメラ。一つのシーンを時間軸を変えてそれぞれの登場人物の視点から観せるパルプ・フィクション的技法。現実離れした半ば空想的で抽象的な映像が多くを占め、台詞や解説を極力排除して非常に淡々とテーマを語る形式になっている。

結論としてはこの映画は一人の男の人生と最期を題材にしているが為「GERRY」よりスケール感がなく、「エレファント」より訴えるパワーがない。しかしながら3作を並べてみたときに初めて「生と死」「死への旅」というテーマが焙り出されてきたことを考えれば、三部作の最終章としてはふさわしいのかもしれない。そう考えるとテーマに一番近いのは実は「GERRY」であるが、それに具体性を持たせて結実させたものが「エレファント」であり、テーマをより解り易く提示したものが「ラストデイズ」ということではないかと思えてくる。
因みに3作で最も成功している作品は「エレファント」であろうが、考えてみれば「エレファント」はコロンバイン高校銃乱射事件をモチーフとしているが為にそれ単体でメッセージ性の強い作品であった。それだけに監督が意図したテーマ性とは別の方向に解釈され易い危うさもあると言えるだろう。これが「ラストデイズ」にも共通する危惧であるが故に、おそらくは敢えてNirvanaの曲や具体的なカートのエピソードを盛り込むことを排したのではないかと思う。

ある日唐突に訪れる「死」、それに向って「生」の旅を続ける我々が出会う人生や運命の岐路、そして「死」という孤独とどうしようもない喪失感。このようなテーマが一連の作品で強く印象付けられるのだ。

カート・コベイン或いはNirvanaのファンとして観た「ラストデイズ」
はっきり言ってこれは期待外れとしか言えない作品だ。
カート・コベインの最期の2日間と聞いて、グランジ、Nirvanaファンであれば誰もが色めき立つのは当然だろう。
リアルタイムでNirvanaを聴いていたわけではないが、"Smells like teen spirit″を高校2年で初めて聴いて以来Nirvanaとヴォーカルのカート・コベイン(Kurt Cobain)のファンとなり、最近出たNirvanaのBOXまで買った自分なので、聴き始めた時にはとっくに銃で頭を打ち抜いて亡くなっていたこのエキセントリックなフロントマンの最期の日々が、どんな形であろうと映画化されるというニュースには当然のように過度に期待をしていたことは確かである。

だが客観的に考えても、この作品をカート・コベインに捧げるのはちょっと辛いのではないかと思った。インスパイアだけと言いつつもマイケル・ピット演ずるブレイクの風貌は一見カートによく似ている、彼が歌う"Death to Birth"はとても切ないのだ。だが、カートの死に到る苦悩も孤独も具体的に何一つ描かれる事がない為に観客にはその哀しみが如何程か、病んでいた彼の心の慟哭の過程が全く伝わってこないのである。
そしてどんな映像や言葉でも語り尽くせないものがあるとすればそれがカート・コベインの「歌」なのだ。カートの人生を何よりも雄弁に物語るNirvanaの曲を本編で一曲も聴く事が出来ないことにはやはり失望を覚えざるを得ない。この作品の中のブレイクという男の最期の日々がガス・ヴァン・サントの意図したテーマを描く為の単なるモチーフだとしても、せめてエンドロールではカートの曲が聴きたかったと思う。
結論、映画単体としては賛同も共感もできないが三部作の最終章として観れば納得はできる作品だ。だがそうだとしてもやはりつまらないものはつまらない。"Smells like teen spirit"を初めて聴いた日のあの衝撃をおそらく自分は忘れないだろう、この歌を歌った男の壮絶な人生とグランジロックの話がまた別の形でいつかスクリーンで観られることを心から願わずにはいられないのだ。
尚、作品中の"Death to birth"はマイケル・ピット自身が作ったらしいが心に響く非常にいい曲である、Youtubeで聴きたい方は此処からどうぞ

※本文中の表記カート・コベイン(Kurt Donald Cobain)は日本ではカート・コバーンと表記されるのが一般的なのだが、知人のアメリカ人に事あるごとに激しく否定されるので一応現地の読み方に従ってコベインとさせて貰った。ま、俳優でもそんなのあるなぁ、マシュー・マコナヘイとかさw

■カートの曲を聴きたい、Nirvanaについて知りたいと思った方は
・予告なく削除されてしまうことがありますが、手っ取り早いYoutubeで
   → Nirvanaを観る、聴く
Nirvana(Ongenより、かなりの曲が試聴&DLできる 主なアルバム紹介も有り)
Nirvana(Universal musicより) 
・Nirvana Boxに収録されている"In Bloom"のPVフル試聴、とにかくカッコいい!
Nirvana Box(BGMで一曲聴けるw)
Amazon.comのアルバム紹介
『カート・コバーン-ALL APOLOGIES』(カート・コバーンの死を検証するドキュメントDVD)

■このサイトのガス・ヴァン・サント監督作品の感想
   GERRY ★★★
   エレファント ★★★★☆
   グッド・ウィル・ハンティング ★★★☆

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■「ラストデイズ」サウンドトラック
Last Days Last Days サウンドトラック

■関連作品DVD、及びCD
カート・コバーン-ALL APOLOGIES カート・コバーン-ALL APOLOGIES
イギリスBBCが制作したドキュメンタリー番組のDVD化
イギリスの音楽誌NME、アメリカの音楽誌Rolling Stoneなどの編集者に加え、当時のプロモーター、ガールフレンドらのコメント、そして貴重な本人のインタヴュー映像によって、客観的にカート・コバーンというロック・スターの死を検証したDVDである。(詳細情報BARKSより

カート&コートニー カート&コートニー
1998年に制作、カート・コバーンの人生と、その死について様々な証言を記録したDVDの日本語版(CDジャーナル参照)

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