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■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2006年
03月
12日
(日)
03:50 |
編集

「ヴァージン・スーサイズ」 ★★★
THE VIRGIN SUICIDES (1999年アメリカ)
監督:ソフィア・コッポラ
原作:ジェフリー・ユージェニデス「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」
脚本:ソフィア・コッポラ
キャスト:キルスティン・ダンスト、ハンナ・ホール、ジェームズ・ウッズ、キャスリーン・ターナー、ジョナサン・タッカー、ジョシュ・ハートネット、チェルシー・スウェイン、A・J・クック、レスリー・ヘイマン、ダニー・デヴィート、マイケル・パレ、スコット・グレン、ロバート・シュワルツマン、ヘイデン・クリステンセン
⇒ テーマ曲 Airの"Playground love"を試聴する
美しい5人姉妹の死を振り返る青春の記憶。本来は家族の有り方の歪みという問題も提起できそうな話だが・・・。
ジェフリー・ユージェニデスの「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」の映画化作品。
まず映画全体の印象としては、忘れる事のできない青春の思い出を物凄くいい雰囲気で描いた映画ではあると思う。手前勝手に美化された記憶というものが持つ刹那的で甘美な香り。と同時に沼地の毒ガスの臭気が包んだ思春期の終焉と「死」の感傷。また、自己を取り巻く世界の色々なものが曖昧で、理由も無い高揚感と刺激に満ちた時代の不安定さと熱さが実に上手く表現されているからである。
だが、如何せんこの映画にはドラマが構築されていない。
例えば何故セシリアを初め姉妹が次々と死を選ばざるを得なかったのか、彼女達の身の上に起きた真実へのアプローチが殆ど見られない作風は個人的にはやはり物足りなさが残る。厳格な母親による抑圧と拘束が姉妹を精神的な閉塞に追い詰め、自殺に起因したことは容易に想像できるのだが、映画はその死を社会的に考察することはせず非常に感傷的な着地で締めくくっている。
またリズボン姉妹にしても彼女達に関心を持った少年達にしてもそれぞれのキャラクター造形が非常に弱い為、その内面を窺い知ることはできない。奇跡的に素晴らしい音楽と70年代アメリカの家族の風景が垣間見える点は悪くないのだが、雰囲気だけに終始した演出面は疑問が残った。
しかしながら、それでも尚この作品が放つ強烈な魅力には言及しておきたいと思う。「ロスト・イン・トランスレーション」といい本作といい、映画としては絶賛するような完成度ではないだろう。だが、自殺という選択をした少女の記憶は異様な輝きを持って少年達の心に存在し続けるのだ。現実には姉妹に与えられなかった「自由」、それにオーバーラップするラックスの妖艶な微笑。美しく痛ましい記憶がいつまでも少年達を苛むように観る者の心にも膿んだ傷口の如きヒリヒリとした痛みをもたらす。
永遠にその時代と共に蘇り続ける甘い記憶と影、誰でもこんな疼くような痛みを伴う記憶に思い当たることはないだろうか?そんな瞬間を切り取って見せるセンスはやはりソフィア・コッポラの天賦の才能だ、雰囲気映画を狙って撮ったのだとすればこの作品は寧ろ大成功だろう。女優に欲なんか出さずにこのまま監督で行って貰いたいと切に願うw。
キャスリーン・ターナーとジェイムス・ウッズが両親役、キルスティン・ダンスト(スパイダーマンのブスっぷりが嘘のようだ)、ジョシュ・ハートネット、ダニー・デヴィートと役者はなかなか豪華だ。もう一つ突き抜けて昇華されない仕上がりは残念だが、輝きと翳りに彩られた青春の思い出を描き出した世界観は優れている。理屈っぽくない問題作を観たい人にはお薦めだろう、そして音楽は文句なしに良かった。サントラ欲しいなぁ。
因みにサントラの全曲一部試聴は此方から(WMP)
特にテーマ曲であるAirの"Playground Love"は名曲だ。PV試聴は①此方または②此方。








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■原作「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」

■「ヴァージン・スーサイズ」サウンドトラック


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