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■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2006年
03月
09日
(木)
08:24 |
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「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」 ★★★
SPIDER (2002年フランス/カナダ/イギリス)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
原作:パトリック・マグラア『スパイダー』
脚本:パトリック・マグラア・デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーン、ブラッドリー・ホール、リン・レッドグレーヴ、ジョン・ネヴィル、ゲイリー・ライネック、フィリップ・クレイグ
⇒ 公式サイト
⇒ スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする@映画生活
ネタバレ有り
統合失調症の男が抱える母親へのトラウマと記憶の迷宮を描く。
全篇通して視点は精神を病む男、この主人公の男の現在と少年時代の過去が錯綜する構成であり、母親の死の理由を紐解くことが彼自身の妄想の全容と狂気の正体を暴くという孤独で暗いストーリー展開になっている。
見所はレイフ・ファインズの迫真の病人っぷりと、自分の都合のいいようにその記憶をも操作する心の闇を絶望感溢れる陰湿なトーンで描いた部分だろう。スパイダーにとって父親と母親のセクシュアルな関係へのトラウマが、母親の中の「女」への殺意に結びついたと考えられる。つまり、彼の妄想の中で父親に殺された母親とは自分にとっての理想の母性の存在であり、その替りに現れた淫蕩な愛人は(これも母親)、「父親の妻」即ち「女」の部分を象徴する存在と考えるべきだろう。【完全ネタバレ 要するに父親が浮気して母親を殺したという記憶はスパイダーが自ら妄想によって改ざんした物、父親は母親を殺してはいない。愛人に見えた女も実母である。母親殺しの犯人がスパイダー自身であるにも関らずその記憶を自らが捏造していたということなのだ。】
解ってしまうと極めて単純な話ではあるが、本作は統合失調症の男の中の茫漠たる記憶を辿り、彼が封印していた記憶を蘇らせることによって男のアイデンティティーの輪郭を映し出す。とはいえ、最初から狂気の状態で登場するこの主人公が辿り着いた記憶が果たして正しいのか否か、それすらも極めて曖昧であり総ては闇の中の話でもある、という辺りがいかにもクローネンバーグ作品らしいエグさだ。
狂気に苛まれる男の心理的葛藤を淡々と描く地味な展開なのでサスペンスというよりも心理ドラマ的な要素が強い作品と言えるだろう。
視覚的な表現の部分でクローネンバーグのいつもの気色悪さはかなり控えめな精神世界の話ではあるが、観客が楽しめるか否か等というエンタメ度にこの監督が注意を払うわけもないw、例によって激しく観る者を選ぶ沈痛な作品に仕上がっていることも確かである。
決して出来は悪くないし個人的にはなかなか面白かったが、伏線としてのクモの糸のエピソードの印象が弱いのはちょっと勿体ないかな。
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