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The Door into Summer
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「ヒトラー ~最期の12日間~」
2006年 01月 22日 (日) 17:02 | 編集
ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディション ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディション

「ヒトラー ~最期の12日間~」 ★★★☆

DOWNFALL、DER UNTERGANG (2004年ドイツ/イタリア)
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
原作:ヨアヒム・フェスト『ヒトラー 最期の12日間
   トラウドゥル・ユンゲ『私はヒトラーの秘書だった
キャスト:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ラーラ、ユリアーネ・ケーラー、トーマス・クレッチマン、コリンナ・ハルフォーフ、ウルリッヒ・マテス、ハイノ・フェルヒ、ウルリッヒ・ノエテン、クリスチャン・ベルケル、ミハエル・メンドル、マティアス・ハービッヒ、ゲッツ・オットー
   ⇒ 公式サイト
   ⇒ ヒトラー~最期の12日間~@映画生活

「第三帝国を建設し、これを情け容赦なく、しかもしばしば非凡な抜け目なさで統治し、あのような目がくらむような高みと、あのような悲惨な最後に導いた人物は、邪悪であったが、疑いもなく天才だった」
(W.L.シャイラー著、井上勇訳「第三帝国の興亡」第一巻18ページ)

ヒトラーの最期とナチスドイツの終焉を描く、内側の視点からのアプローチが興味深い作品である。
監督は「es」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。調べてみるとヒトラーに関連する作品は、ドキュメンタリーによる回想録形式で旧西ドイツで作られた作品や他国製作によるTVドラマは少なくないものの、劇場未公開作品が多い。本作の意義は勿論先の大戦の意味を60年後の現在という時点から振り返るという部分はあろうが、それ以上に統一後のドイツから生まれたヒトラー作品として世界に発信されたこと、そしてタブー視されてきたヒトラーの人間的な側面に肉迫する作品である点、もう一つはヒトラーに忠誠を誓った幹部側近の人間達がその最期に当っていかなる選択をしたかという事実を描き出している点にあると思う。

映画の語り手となるのはヒトラーの秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲ。
敗戦の色濃い1945年の首都はソ連軍の包囲網で壊滅状態。本作はヒトラーが自殺する直前の12日間を、彼の秘書ユンゲの視点で克明に描いてゆく。
第三帝国の設立に妄執し、首都を決して去らなかったヒトラーの人間的な一面も垣間見えるのが興味深い。秘書に見せるヒトラーの表情はあまりに優しく、恐ろしいカリスマの片鱗は伺えないが、その一方で激しく「裏切り」を恐れた孤独な人間像も浮かび上がる。大戦の引き金を引き、アウシュビッツを作り、容赦ない虐殺と侵略を重ね、ドイツを敗戦に導いた男。ナチズムに洗脳された異様な光景はヒトラーという男のカリスマ性と不気味な全体主義国粋主義を我々に強く印象付けるものだ。

但し秘書の視点で見る12日間に集約された群像劇であるが故にヒトラー政権の思想或いはその所業の全体像が見え難い点は否定できない。作品を通じて率直に感じる「何故多くの人間がこの男に立ち従って命運を共にしたのか」という疑問、それは当時のドイツの政治或いは経済状況という歴史的な背景、時を得て誕生したヒトラー政権とナチズムという側面の言及がなければ理解は困難なものであろう。入門書的ではあるが「ナチズムの時代」でもドイツの当時の社会背景等が窺えるし此方のサイトのナチズムについての描写も簡潔で参考になる。ヒトラーの思想的な足跡は「わが闘争」に詳しく記述されている。本作を誤解無きように観る為には、いかにヒトラーという男が天才的な頭脳をもって狂気の殺戮を行ったのかという歴史の事実を、我々鑑賞者が認知しているという前提条件がある作品とも言えるのではないか

最期の時近くしてヒトラーの心理状態が逼迫し錯乱の傾向を見せる。国民という国家にとって最も大切であるはずの財産を黙殺した時点で彼の命運は尽きていたはずなのだが、それでも尚ヒトラーへの忠誠を守り、廃墟と化しつつある街で死を賭して戦い続ける兵士を戦いに駆り立てた男の絶対性に改めて背筋が寒くなる思いがした。
さながら地獄絵図のようなベルリン市街の攻防戦と、表面的には平静が保たれているヒトラーの地下要塞を映し出して見せる対照も効果的である。
また特筆すべきはブルーノ・ガンツの熱演だろう。写真やフィルム等で見るヒトラーにその風貌がよく似ていることも大きいが、第三帝国の建国に妄執する男の鬼気迫る表情や人間的な表情を見事に演じ切っている。

この作品は決してヒトラーの所業を具体的に触れるものではないし、鑑賞者の史上最悪の非道なカリスマに対する見方を変容させようとするものでもない。あくまでも彼の悪行と罪過は作品の前提であることは観る側は常に肝に銘じておくべきである。しかし、たった12日間の描写が、ヒトラーの魅力に心酔しナチズムというイデオロギーに支配された者達の様々な人生の選択を浮き彫りにして、改めてヒトラーとその時代を我々に問いかける。600万人ものユダヤ人大虐殺の歴史を決して忘れてはならない、しかし隠された真実にも目を背けるべきではないだろう。美化することなく歴史の真実を受け止めたい、そう思わせてくれる作品だった。

最後に「わが闘争」の序文として平野・将積両氏によって記された文章を抜粋させて頂く。我々が史実を受け止め考える際の礎として心に留めておきたいと思う。
「かかる狂気の天才に活動の場を与えた国民大衆の責任、ヒトラーの言葉の魔術に幻惑されるような政治的、あるいは精神的な幼稚さの責任について、他山の石として考えてほしいのである」
(アドルフ・ヒトラー著『わが闘争』、平野一郎・将積茂訳者序、上巻9ページ)


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