-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


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「ひまわり」
2006年 01月 11日 (水) 22:10 | 編集
ひまわり ひまわり

「ひまわり」 ★★★☆

(2000年日本)
監督:行定勲
キャスト:麻生久美子、袴田吉彦、 河村彩、マギー、粟田麗、土屋久美子、ひふみかおり、ボブ鈴木、戸田昌宏、光石研、北村一輝、津田寛治、堺雅人、田中哲司
   ⇒ ひまわり@映画生活

2回観て印象がかなり変わってしまった作品なのでとりあえず両方書いておきたいと思う。

■ 初見の感想から。

一言で言えば、"忘れ去られていた過去とのノスタルジックな邂逅"の物語である。
プロットは海難事故で死んだ同級生の遺体の無い葬式に集まった人々の記憶の断片から、朋美という女の人間像、そしてそれぞれの過去の記憶が鮮やかに蘇生されていくというもの。
構造的には俗っぽい現実からファンタジックな幻想に転調し、終幕で鳴る携帯で現実へ回帰していく。
中心となるエピソードは死んだとされる朋美(麻生久美子)への記憶である。忘れていた記憶の再生というモチーフの点では岩井監督の「Love letter」にちょっとだけ似ているが、本作の場合、朋美の輪郭を描くものは彼女に関った人間達の思い出だけなのだ。記憶の中に現れる朋美はいつも柔らかい朧ろげな光に包まれて登場し、どの記憶の中でも物憂げで何か満ち足りない表情を浮かべその正体が知れない。ソフトフォーカスによる映像は彼女がおそらくもうこの世にいないこと、そして記憶というものの曖昧さ・儚さ自体を鮮烈に物語る。
前半のリアルさから、幼い日の朋美の姿を輝明が見る後半以降はファンタジーへと急展開していく。靴を隠すエピソードによる現在と過去との交錯シーンは同監督の「世界の中心で愛を叫ぶ」のそれを思い出させるものだ。
朋美が欲しかった物は、ひまわりのように明るい人生だったのだろうか。自分に向ってまっすぐ投げられるボールだったのだろうか。朋美と輝明との二人の再会部分はほぼ夢のような世界であるが、現実には決して寄り添う事がなかった二人の思いを映し、美しく切ないシーンとなっている。
真鍋朋美の死によってもたらされた出会いと、記憶の再生。
それが彼等にとって自らの人生を見つめ直す機会となったのかどうかは解らないが、誰にでもある忘れかけていた思い出を取り戻すようなそんな暖かさに満ちた作品であるように思う。
袴田吉彦の台詞回しがちょっと固いような気がしたが、概ねキャストは皆其々の役柄の個性に合っていてキャラクター構築も優れていると思う。特に麻生久美子の捉えどころの無い雰囲気はこの作品の大きな魅力なのではないだろうか。


■ で、再度鑑賞してからの感想と解釈。

実は「閉じる日」のような曖昧さを秘める物語であると思う。
これ以降完全に映画細部のネタバレになってしまうので映画をご覧になった人だけ反転して下さい。


もし自分がこの作品を映画館で鑑賞していたならおそらくこの疑問には気がつかなかった可能性もある。その位の解り難さで本作には不思議なトリックが仕組まれているのだ。
驚くべき事にこの葬式の参列者は輝明以外全員海難事故の犠牲者なのである。
ラスト近くで明け方彼等が海岸で船を掘り出し、それが転覆する、という奇妙なエピソードがある。まるで朋美の釣り船事故を彷彿とさせるような、ひっくり返って腹を見せる船の映像が気になって、後でもう一度海難事故のニュース映像の場面をリピートして初めて解ったことだ。
だからこの物語は、死んだ彼等の記憶がただ一つ繋がる「点」としての「朋美」という女の記憶を軸にして、輝明と死者の「思い出と幻想」を交錯させながら描いた作品と判断する事もできるのである。輝明にかかってきた朋美の電話だけが真実で、なんていう見方も不可能ではないが其処まで穿った解釈をする必要はあるまい。


日食、握り締めた種、ぶつけられなかったボール、ひまわり畑、そして夢から覚醒させるかのように鳴り響く携帯電話。
いずれにしても本作は、積み重ねられた日常の中に茫漠と沈殿し忘れ去られていく記憶への郷愁と回帰を巧妙に描いた作品であるように思う。金環食を背に振り返った少女、あのぼんやりとした1シーンこそ、遠い日の思い出が見事に再現された瞬間ではないだろうか。
柔らかく穏やかなトーンながら酷く心の奥の方に響く、そんな作品である。

死を迎えた時自分は生きている人間の記憶の中にどんな風に再生されるのだろうか。


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