-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「光の雨」
2005年 12月 31日 (土) 00:25 | 編集
光の雨 特別版 光の雨 特別版

「光の雨」 ★★★☆

(2001年日本)
監督:高橋伴明
原作:立松和平 『光の雨』
キャスト: 萩原聖人、裕木奈江、山本太郎、池内万作、鳥羽潤、小嶺麗奈、川越美和、塩見三省、大杉漣、高橋かおり、金山一彦、大柴邦彦
   ⇒ 光の雨@映画生活

その時代を本当に自分は何も知らない。
全共闘時代、革命、自己批判、総括。

約30年以上前に起きた連合赤軍による同志リンチ事件の首謀者達がその時今の自分と同じ学生だという以外に何ら共通項もなく共感も憧憬もない、自分にとっては極めて理解し難い時代、そして思想でもある。
劇中劇の手法によるメタ映画である本作は、映画の出演者となる登場人物が見せる"時代への無知"を語ることによって、いかに今の我々が僅か30年ほど前の日本の現実と乖離して此処に生きているのかという事を改めて問いかける。フィクションとして造り上げられた現代の若者による映画撮影、その設定が陰惨な事件を包み込んでしまう二重構造は、時代という大きな流れと世代間のギャップを反映することにはある程度成功していると言えるだろう。でもこの作品はそんなことを描きたかったのか?そして伝えたかったのだろうか?

映画の中の映画であるが故に、連合赤軍事件という事実に向き合う作品と鑑賞者の間には常に一定の距離感が保たれたままだ。時折り挿入される「映画の演出」というシーンによって何度も現実に立ち返ることを余儀なくされる。思うにこの緩衝材の為に映画のリアリティは半ば切先を欠いた刃のように鈍く緩慢なものとして具現化される。特にキャストが赤軍メンバーを演じた後のインタビューシーンはそれが顕著に現れた部分ではないだろうか。即ちここに登場し映画の感想を述べる彼等は脚本通りに台詞を「読んでいる」のであって、彼等の本当の言葉等何一つ無いのである。もしこれが永田洋子演じた○○(役名)のインタビューではなく、裕木奈江本人のインタビューだったならばどれほどリアリティを持ち得たか。一人一人仲間を失っていく「総括」の事実をドキュメンタリータッチで肉迫したにも関らず、それを受け止める器は紛い物、やはりこの作品の脚本には決定的に大きな誤謬があるように思えてならないのだ。

結論としては、自分が観たかった連合赤軍事件はこんな「作り物」めいたお話ではなかったし、あの時代を知らない人間に事件の有様を如何に伝えるかという映画としての意志がこの作品には不足しているように感じられた。役者としての苦悩と自己批判で後戻りできなくなっていく学生との対照は上手いし事件の異常性自体は大いに伝わってくる、それだけにストレートに事件に対峙して描いて欲しかったと思う。

以下は蛇足であるが個人的に思うこと。
連合赤軍の革命闘争と暴走というその一連の行動を時代錯誤と批判し否定する事は簡単だ。また彼等が自己批判援助と総括なんていう独善的な思想を振り翳した人権無視のテロリスト集団であることは決して翻るものではない。だが漫然と時代に流されて生きるという道を選択しなかった若者達が確かにその時代には存在したのだ。
自分等の親の世代が大なり小なり苦悩して生き抜いた歳月があって今があるという当たり前のことさえ忘れがちな自分等の世代には、こうして日本を振り返ることができる映画はとても貴重なものだ。勿論この映画では当時の政治もイデオロギーも断片的にしか語られないし、事件の全貌も解らない。また作品自体事件の真相に対して何らかの結論を出そうとするものでもない。
だが、一つの大きな問いが残滓として膿んだ傷のように痛み続けないか?
  革命戦士とは、
  革命とは、
  あの時代とは一体何だったのだろうか、と。
忌むべき事件であろうとも歴史に目を背けるべきではない。最後まで残るこの問いかけはこれからの時代に引き継がれた一つの命題でもあるように思うのだ。

で、ラスト立松和平の「ありがとう」だけはマジでいらない。ナルシスティックな言葉で締めくくって、あたかも彼等の時代の総括をしたかのように感傷に浸る、それがこの作品には邪魔なのだ。あの時代に生きた人間のノスタルジーやナルシズムを観たくて俺等は映画を観るわけじゃない。
その後の話を警察側から描いた「突入せよ!『あさま山荘』事件」もなかなか見応えのある作品なので、興味のある方は是非。


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■原作「光の雨」
光の雨 光の雨

■参考図書、DVD
連合赤軍・ 連合赤軍・"狼"たちの時代―1969-1975

突入せよ!「あさま山荘」事件 突入せよ!「あさま山荘」事件


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