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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「HANA-BI」
2005年 12月 21日 (水) 01:27 | 編集
HANA-BI HANA-BI

「HANA-BI」 ★★★☆

(1997年日本)
監督:北野武
音楽:久石譲
キャスト:ビートたけし、岸本加世子、大杉漣、寺島進、白竜、渡辺哲、薬師寺保栄、逸見太郎、矢島健一、芦川誠、柳ユーレイ、玉袋筋太郎、つまみ枝豆、津田寛治
   ⇒ HANA-BI@映画生活

二度と取り戻せないかけがえのないもの、それを喪ってしまった者たちを前にして西という男が繋ぎとめようとしたものは一体何であったのか?

たけし演ずる西とは殆ど自らを語らず、その存在の輪郭を語るものは周囲の台詞と彼の行動のみである。愛する弱き者にはどこまでも優しく、敵と見做した者には容赦しないこの男の痛みを映画は繊細に紡ぎ出す。特にたけし自身が描いたという「絵」というモチーフは本作では人物の心象風景となり、観客をその世界観に容易に惹き込む為のユニークな演出となっている。
また過去のエピソードを時折り挿入する構成によって話の展開にはリズムがつき、淡々としたストーリーながら最後まで観る者を惹きつける辺りもさすがだ。

この瞬間あらゆる人間は生きていて、皆それぞれに守りたい物を持っている。
子供を失い妻を今まさに失おうとする男が愛する者に見せる限りなく優しい表情。総ての痛みを引き受けるように男はその優しさを孤独に引き換える。行き場の無い深い哀しみと孤独と、そして愛する者への思いと。何の為に誰の為に人は生きるのか、そんな事をさりげなく問いかけられるテーマ性も非常に共感させられた。

だが少々作品としてまとまりすぎて初期の北野作品のようないい意味での粗さが消えて面白味が減ってしまったような気もする。(それは観る方が見慣れたということもあるのだろうけど) 
特に監督自身の絵は非常に印象的ではあるが最後に見せる「自決」という文字の入った絵は完全にやり過ぎに思える。監督の絵は友人の心象風景であると同時に西という男の持つ暴力性や優しさを象徴して見せるメタファーとして効果的な映像となっているが、反面それが監督の手の内をすべて見せてしまう両刃の剣にもなり得ると思うのだ。明らかに終幕に向って疾走するあの場面でエンディングを匂わせる必要などないはずである、メタファーは過度になっては意味がない。

勿論映像で作品を表現しようとするスタイルはいいと思うしその映像自体も日本の美しさをフィルムに収めることに成功している。だが、極端に台詞を排しある意味パターン化した演出は北野映画の総決算として出尽くした感は否めない。素晴らしい才能を持つ監督であることは間違いないし最も期待し得る監督の一人であろうと思うが、少々マンネリ気味か、新作「TAKESHIS'」は彼自身の模索でもあるのかもしれない。

1997年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品、ラストシーンは「気狂いピエロ」を想起させられる鮮烈さがあった、キタノブルーの爽やかな空の色が痛切な痛みとなって心に響く。個人的にはこれも好きな作品。


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■北野監督データ
   ・フィルモグラフィー
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     あの夏、一番静かな海。 ★★★★ 
     ソナチネ ★★★★☆
     キッズ・リターン ★★★★
     HANA-BI ★★★☆
     Dolls ★★★
     TAKESHIS' ★★☆

■サウンドトラック
HANA-BI(サントラ) HANA-BI(サントラ) 

JOE HISAISHI MEETS KITANO FILMS JOE HISAISHI MEETS KITANO FILMS

北野作品の中の久石譲の楽曲を集めたアルバム。
名曲が揃っているので北野・久石ファンには嬉しい一枚w

■北野武監督作品お薦めDVD
ソナチネその男、凶暴につきキッズ・リターン
あの夏、いちばん静かな海。Dolls [ドールズ]3-4×10月



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