塀の中に集まった様々な過去を背負った男たち。
ペーソス溢れる軽妙な語り口で描かれた人間観察記である。

実体験を元に刑務所生活を綴った花輪和一の同名漫画の映画化。
拳銃不法所持で逮捕された男の刑務所の日々を、小さなエピソードの積み重ねによって実にリアルに生々しく描く。刑務所初体験の主人公の視点で綴られていくことによって、巧みな観察日記になっているのが実に面白い。

思うに刑務所とは、普通の人間には体験できないような人生の修羅場を潜り抜けた人々が集まっている場所なのだ。だが主人公の花輪和一の視点で語られる刑務所は、規律正しく自由を束縛されつつも、その中にわずかな喜びや楽しみ、生き甲斐を見出そうとする個性豊かな男たちで溢れている。塀の外から見た彼等の生活は酷く窮屈そうだが、囚人たちの生き生きしたどこか楽しげな表情がいつのまにか羨ましくさえ思えてきてしまう、困ったものだｗ。

山崎努や香川照之など役者陣の地味ながら出色な演技がこの作品を支えていることは言うまでもない。個人的にあまり相性の良くない崔監督作品の中では当然一押し、必見である。

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