-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「サマリア」
2005年 12月 02日 (金) 00:29 | 編集
サマリア サマリア

「サマリア」 ★★★★

SAMARIA (2004年韓国)
監督:キム・ギドク
キャスト:クァク・チミン、ソ・ミンジョン、イ・オル、クォン・ヒョンミン、オ・ヨン、イム・ギュノ、イ・ジョンギル
   ⇒ 公式サイト
   ⇒ サマリア@映画生活

キム・ギドクが描き続けるものとは、人間の性というものに潜む原罪なのかもしれない。

この「サマリア」という作品は、「悪い男」「春夏秋冬そして春」或いは「魚と寝る女」で寓話的に男と女の根源的な愛の形に肉迫し、愚かしくも美しい人間の愛の本質を抉り出そうとしたこの監督の一つの結実であるように思う。あどけなく笑う少女達の横に十字架を配し、トリアーが「奇跡の海」で描いた不浄の中の無垢と対照的に、ギドクは無垢なる者故の残酷さとその罪を描いてみせる。

「バスミルダ」「サマリア」「ソナタ」という三部構成によって宗教的な色合いの濃い作品となってはいるが、援助交際という現代的なモチーフによって極めて観客の感覚に近い世界観が展開される。「バスミルダ」が売春という名の罪の章であるならば、「サマリア」は聖女の贖罪の章であろう。自らの性を弄び死んだ友への、或いは自分の身代わりの存在への贖罪としてヨジンは逆援交を行う。それが更なる罪の上塗りであろうともそれしか罪を贖う方法を知らない少女の愚直なまでの純粋さによって、サマリアの女に象徴される女の性(さが)が描かれているのである。そして父親は娘の行為に苦悩し、その罪を総て我が身に背負い拾い集めようとする、それが次の第三章だ。

最終章の「ソナタ」は、父親と娘の旅を通して浄化されない罪への一つの終止符とその痛みを深く刻み込む章となっている。
犯してしまった罪の意識に苦しみ父親に葬られる夢を見る少女と、幾ら拾い集めても集めきれない罪を自ら引き受ける父親、其々の思いを交錯させた象徴的な映像が非常に心に迫る。そしてこの章のもう一つの重要なモチーフが車であることにも注目すべきだろう。車を運転させることは即ち娘を大人として社会に送り出すことなのだろうと思う。父は運転を教え一切の罪を引き受けて静かに去る。この作品は援助交際やブルセラ等で浮き彫りにされる大人の偽善や欺瞞を鮮やかに収束し、社会に対する大人の責任と決着をも映し出して見せたのではないだろうか。
純粋で覆われた少女の無垢は、父親に取り残されることで初めてその罪と生きることの重さを知るのだ。

寓話的な要素を盛り込むことが多いギドク監督の作品の中では、むしろシンプルで理解しやすい作品に仕上がっているように思う。二人の少女の透き通るような美しい微笑が印象的だが、水、石、映る影、ギドク作品に度々登場する映像もその寓話性を象徴する。細部に至り実に凝った映像の美しさはやはりギドク監督ならではのものだ。俯瞰で撮られたエンディングで、観る者は、一人残され佇む少女の未来に希望の光が射すことを祈らずにはいられないのである。
人間の愚かしさを突き詰めつつも、それを見つめるギドクの視線は限りなく穏やかで温かい。痛切なる詩情に溢れたギドク作品のまさに傑作と言えるだろう。

2004年ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。
尚、公式サイトによれば「バスミルダ」とはインドの伝説の娼婦の名前、「サマリア」は聖書に登場する“サマリアの女”をモチーフにしているとのこと。最終章ソナタは三部構成の交響曲のラストを飾るものとしてこの作品を穏やかな終局に導く。

◆参考資料 
   ・ サマリアの女「サマリア」公式サイトより)
新約聖書ヨハネ第四章に登場する、名もなきサマリア人の女性のこと。
罪の意識のために隠れるように生きてきたが、イエスと出会い罪を意識することで生まれ変わったように信心深く生きた人物。聖書にはイエスの深遠な教えの受け取り手が、世間的に蔑まれる女性であるという逆説がしばしば登場する。
   ・ サマリア(Samaria)
パレスチナのヨルダン川西岸地区一帯の地域名で、また西岸地区にある都市である。古代のサマリアは、パレスチナにイスラエル王国が存在した時代に、幾人かの王による偶像崇拝の中心となった地域でもある。
   ・ ソナタとは?
      1.ヒュンダイ・ソナタ:韓国の大衆車
      2.ソナタ:西洋音楽の室内楽曲

◆このブログのキム・ギドク作品感想LINK
   ・ 春夏秋冬そして春 ★★★☆
   ・ 悪い男 ★★★☆
   ・ 悪い女 青い門 ★★★☆
   ・ 魚と寝る女 ★★★☆



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