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■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2005年
11月
25日
(金)
01:49 |
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「ロング・エンゲージメント」 ★★★
UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (2004年フランス)
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
原作:セバスチャン・ジャプリゾ『長い日曜日』
キャスト: オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、ジャン=ピエール・ベッケル、ドミニク・ベテンフェルド、クロヴィス・コルニヤック、マリオン・コティヤール、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジュリー・ドパルデュー、ドミニク・ピノン、ジョディ・フォスター
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リアリズムとファンタジーを行ったり来たりのジュネ流のアンバランスな世界観。しかし徹底的なリアリズムがファンタジーと同居することの難しさをも露呈した作品。
戦争ドラマでありつつ、恋愛ドラマと恋人探しのサスペンスを絡めるという異色のミステリー仕立ての物語だ。思った以上に戦場のシーンは実に生々しく迫力があるし、サスペンスの骨子もきっちり作り込まれてはいるが、序盤でこの映画の色を把握できる否かで評価が大きく分かれてしまう作品でもあろう。
その序盤であるが、マチルドがマネクの生死の真実を探すことになるまでをナレーションと証言で説明。このプロローグの長さが映画を観始めた観客をまず若干不安に陥れてしまう。実はこの部分で登場人物のキャラを把握し相関関係を理解することが必要不可欠なのだが、サスペンスチックな展開を予期していないとここでかなりの観客が置いていかれるのではないか。個性的なプロローグによって本作が普通の戦争ドラマではないことを感じ取れれば、その後は謎解きの展開がそれなりにテンポ良く進んでいくのでそこそこ楽しめる作品だと思う。
見所としては戦場のリアリズム描写と、ヒロインがマネクの生存を信じ続け真実に近づいていく謎解き、またマネクと戦場で関った人間達の情報が紐解かれることによって、戦争がもたらした真実と様々な哀しみにヒロインが出会うというドラマ性だろう。ファンタジー色の強いジュネ監督の以前の作品に比べ、人間の残酷さや愚かさがよりストレートな形でここでは呈示される。勿論戦争の現実を描きつつもどこかお伽話チックなレトロな雰囲気を漂わせた辺りはやはりこの監督独特のセンスによるものだろうが、このミスマッチな世界観は賛否あるところかもしれない。
そして特筆すべきはやはり映像なのである。戦場以外のシーンはセピアのノスタルジックな色彩に彩られ、第一次大戦当時のフランスの田舎の生活を窺わせる風景は実に美しく戦場の悲惨なリアリティと対照を成す。凝りに凝ったカメラの動きや位置は味のあるショットとなって積み重ねられ映画の風景を形作るのだ。俯瞰でローアングルで或いは360度とさりげないシーンからスケール感の大きいシーンまで実に魅力的なショットが連続することには全く驚かされた。特に灯台、飛行船の納まった野戦病院、戦場のリアルな肉弾戦等動きのあるダイナミックなシーンの数々は単調になりがちなドラマを支え、印象的なシーンとして我々の脳裏に強く焼き付くのである。
しかし、だ。悲しいかな、その映像を持ってしてもこのヒロインに感情移入し難いのは致命的だ。これは「アメリ」的な要素が災いしているのかもしれないがティナという娼婦の方がよっぽど映画的なキャラに思えてしまうことも事実。このヒロインの恋人探しは少しも必死に見えないし、探偵ごっこでもしているようなドライな印象を受ける。
また手紙のモノローグや証言者の回想、ナレーション等とにかく説明的な言葉が多過ぎる、そして重要人物達のキャラクターは悉く見分け難い、残念ながらこれ等が最後まで作品のマイナス要因になってしまったと思う。感動的であるはずのエンディングも延々と言われなくても解るナレーションを聞かされ興醒めだ。この演出はフランス人にはウケるのかどうか知らないが「CASSHERN」の喋り過ぎに似通った鬱陶しさを惹起させられてしまうのである。
決して悪くはない、だがそれ以上でもない、おそらく相当の予算をかけて作られたであろうこの映画には最後まで奇妙なちぐはぐさが漂う。
それにしてもジョディ・フォスター、フランス語ウマー(゚Д゚;)








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