-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「キッズ・リターン」
2005年 08月 24日 (水) 10:06 | 編集
キッズ・リターン キッズ・リターン

「キッズ・リターン」 ★★★★

Kids Return(1996年日本)
監督:北野武
キャスト:安藤政信、金子賢、石橋凌、森本レオ、山谷初男、寺島進、モロ、モロ師岡、津田寛治

「まだ始まっちゃいねぇよ」
泥臭い、しかし曇りのないエネルギーを感じるこのたった一言の台詞が、折れそうな心を熱く突き動かす。

感想にはネタバレが含まれます。
監督自身の事故後の作品は、絶望を絶望だけの色で覆い描き切るということがない。自虐的な暴力性を秘めつつ、どんなに残酷な結末が待っていようとどこかに暖かさや慈しみが匂う、そういうトーンが多分自分は好きなのかもしれない。

この「キッズ・リターン」は苦悩という言葉さえもまだあてはまらないような行き当たりばったりの青春の挫折と再生への希望を描いて、北野作品中でも「ソナチネ」と並ぶ傑作である。何を探しているのか、それすらも見えない日々の繰り返しにもがく主人公達。一時の成功は案の定脆く崩れてしまうが、人生を決して諦めない、萎えない魂に爽快感さえ感じる。この帰結があたかも監督自身の事故からの再生とぴったりと重なって、非常に心に沁みる一篇なのだ。

特に印象的なシーンとして自転車で校庭をゆっくりと横切る遠景のカットが何度かある。それぞれ色々な心情を投影する場面だが(淡い希望だったり別れだったり挫折だったり)そのシーンが非常に効いているのだ。寄り過ぎず遠過ぎず視線の客観性を保持しつつ要所でリピートするこういう演出は北野監督は非常に上手い。
また現在→過去の回想→現在という構成の手法自体は新しくないだろうが、二人の過去に観る者を惹きつけるという意味で効果的に機能している。
また脚本も非常に緩急あってスパイシーだ。中でも多分挫折するであろう布石をさりげなくプロットに盛り込んでいる点は見逃せない。シンジに近づく落ちこぼれボクサーのエピソードはボディブローのようにじわりと効いてくる。金魚の糞系シンジと単純チンピラのマサルのキャラもありがちだが丁寧に描かれてリアル。安藤政信、いいですよ。

そしてクライマックスのあの名台詞である。
そう、まだ何も始まっていないのだ。エンディングの二人の会話は、彼等の新たな再生へのスタートであり、また映画を観る多くの人々へのエールでもある。と同時にこの台詞は監督自身の復活を誓うメッセージでもあるのだろう。
間違いなく青春映画の傑作中の傑作でありつつ、北野作品の今後の方向性を示唆するターニング・ポイント的重要作品の一つでもあると思う。

結局、何か拠所を見つけたい、打ち込めるものを探したい気持ちはあれど、この主人公達は能動的に動いているわけではなくて、それを探す術さえ持ち合わせていない。全く愚直で半端な奴等なのだが誰でもきっかけがなければ踏み出せない事もあるし、そのきっかけが作れない気持ちもよくわかる。映画にとって一番大切なものは「テーマ性」だと思うが、観客が共感し共鳴して思い入れることができる、それが実は映画の途方もない魅力だと思うのだ。その点でこの「キッズ・リターン」は北野作品の中でも傑出したパワーがあるのかもしれない。

最後にやはり久石譲氏の音楽について言及しておきたい。他の作品では映画の中で多少音楽が饒舌過ぎて、煩わしく感じさせられることもあったが、本作では乾いた孤独と情熱を秘めた旋律が、映画の一つ一つのシーンと溶け合って心を揺さぶる。特に"High Spirits"(Clickで試聴サイトへ)の旋律は映画の様々なシーンとオーバーラップして素晴しい。

萎えそうになった自分をどうにかしたい、そんな時ふとこの映画を思い出す。
これこそ青春映画の真髄だ。


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■サウンドトラック「キッズリターン」
Kids Return(キッズ・リターン) Kids Return(キッズ・リターン)
   ⇒ HMVでサントラを全曲一部試聴する

■「キッズリターン」テーマ曲収録アルバム
JOE HISAISHI MEETS KITANO FILMS JOE HISAISHI MEETS KITANO FILMS
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