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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「アンテナ」
2005年 08月 29日 (月) 19:28 | 編集
アンテナ スペシャル・エディション アンテナ スペシャル・エディション

「アンテナ」 ★★★☆

(2003年日本)
監督:熊切和嘉
原作:田口ランディ 「アンテナ」(幻冬舎刊)
キャスト: 加瀬亮、小林明実、木崎大輔、宇崎竜童、麻丘めぐみ、大森博、小市慢太郎、甲野優美、入川保則、黒沼弘巳、占部房子、榎戸耕史、春海四方、寺島進、光岡涌太郎
公式サイト

抱えきれない苦しみを背負ってしまった人間はどうやって「生」に向き合えばいいのだろうか。

たった一人の愛する者の喪失がどれほど人にダメージを与えるか。この作品は乗り越えられない喪失の痛みを映像化すると同時に、それを乗り越えて行こうとする者達の魂の置き場とも言える、再生の道程を描いた作品である。
やり場のない思いを宗教に託し錯乱する母親、失踪した真利江の代わりになろうとする弟、責任を転嫁され自分を責め続ける主人公。
トラウマの癒しと再生というテーマは「コンセント」と似ていなくもない。主人公の過去の記憶と現在とのシーンが入り混じる展開は、彼自身の心の揺れと苦悩を投影し非常に繊細で丁寧だ。

「薬なんて心の本当の部分には届かない」という台詞がやけに心に響く。
心に届くものの形がどんなにいびつだろうと、それでしか癒されないということもあるということなのだろう。それが自傷とSMだったというのが何とも痛くて歪んでいる所なのだが、少なくともこの主人公は封印された記憶を取り戻し、「あの日」に閉ざしてしまった自己を解放することができたのだ。
彼が夢で抹殺したものは、自分自身の傷だったのか、歪んだ記憶だったのか、或いは真利江がいなくなった日に失った少年時代だったのだろうか。痛過ぎる彼の心の彷徨の果てに、エンディングで壊されていく扉から漏れる眩い光で観る者は心救われる。云わば長い長い悪夢から覚醒したようなそんな瞬間だ、このラストはとても良かったと思う。

幼児性愛、新興宗教、性的倒錯への逃避、病める社会の現実を赤裸々に提示した作品でもあるのだが、観ていて気持ちいい作品ではないし遅々としてテンポもあまりよくない。最初から最後まで沈痛で重苦しい雰囲気が漂う映像や、音楽を使わない静寂の世界で2時間苦悶の心理描写が続くので、こういう作品が苦手な人には絶対向かないだろう。主人公はSMにまで自分を追い詰めてトラウマを昇華したのに、母親と弟は一体どうやって正気に帰れたのか、その辺の見せ方も少し緩いように思う。だが、原作の一つの解釈としては悪くない作品だと感じた。

何といっても加瀬亮の熱演に尽きるのだが、SMお姉さんが終いには天使かカウンセラーみたいなことになってたのはある意味感動(爆。 もし彼女でなければこの男は救われなかっただろうから話としてはあまりに偶然の幸運過ぎる気もするけどね、見所は加瀬亮とSMお姉さんの我慢大会

 アンテナ@映画生活

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■田口ランディ 「アンテナ」
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