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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「ガタカ」
2005年 08月 29日 (月) 00:35 | 編集
 ガタカ

「ガタカ」 ★★★★☆

Gattaca(1997年アメリカ)
監督:アンドリュー・ニコル
キャスト:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、アラン・アーキン、ローレン・ディーン、ゴア・ヴィダル、アーネスト・ボーグナイン、ザンダー・バークレイ、イライアス・コーティーズ、トニー・シャルーブ、ウナ・デーモン、ブレア・アンダーウッド、ウィリアム・リー・スコット
   ⇒ マイケル・ナイマン作曲"Gattaca"を試聴する

差別が科学の領域に踏み込んだ時、人が人であることの意味とはどこにあるのだろうか?

 遺伝子によって総てが決される近未来社会において、人間の尊厳を問うSFヒューマンドラマである。監督は「ロード・オブ・ウォー」「シモーヌ」のアンドリュー・ニコル。

 この作品に描かれる劣性遺伝子の排除とは、遺伝子によって選別された新たなる階級社会の誕生を意味するものだ。派手さのある映画ではないが、現在の遺伝子科学から見てもそう遠くない恐ろしい未来の一つの形を映像化して見せた実に傑作であろう。

CODE46」を観て思い出した作品の一つなのだが、やはりこの映画の持つ深さと哀しみは他に変え難いものがある。
 表層的にこの映画を捉えれば、愛の結実として産まれ出でたにも関わらず皮肉にも劣性遺伝子を受け継ぎ「不適正者」となったヴィンセントが、その運命を必死に切り開こうとするアメリカン・ドリーム的成功譚にも見えるだろう。作品が醸成するオーソドックスな青春感動ドラマ的な匂いはおそらくはそれに起因する、だが本質は決してそれだけではない。
 我々人間にとって何が可能で何が不可能なのか、予めそれが決められた社会がいかに馬鹿げているか、人間の存在価値とは一体何なのか。
作品は人間の尊厳を問うという普遍的なテーマを淡々と語ってみせているに他ならないのである。

 そして圧巻なのはエンディングであろう。ヴィンセント、ジェローム、医師それぞれの選択は定められた運命への挑戦を静かに映し出す。即ち不適正者とされ自らを偽ることでしか未来を開けなかったヴィンセントと、エリートでありながらもその道を断ってしまったジェロームの選んだ運命との対照、それは遺伝子による管理社会への痛烈な批判と警鐘なのである。
 また、ヴィンセントの旅立ちという、絶望だけではない「人間の可能性」への視座がきっちり盛り込まれたことによって映画として懐の深い作品に昇華されたのではないだろうか。

 ジュード・ロウとユマ・サーマンの表情の少ないクールな演技が冴え、管理された近未来社会の人間像を象徴的に描き出すのに実に貢献している。対照的に泥臭いイーサン・ホークもまさにはまり役と言えよう。
 未来描写は若干抽象的だし、細かい設定のアラ(ジュード・ロウとイーサン・ホーク顔が別物過ぎだし)は多少あるけれども、映像の美しさといい深いテーマを包括した脚本といい特筆すべきものがある。
 無機質でクリアーかつシンプルな近未来映像は「ブレードランナー」とはまた違った美しくも朽ち果てる予感を孕んだ独自の世界観を築き上げた。所謂SF映画的なCG満載作品とは一線を画して、作品自体の印象はどちらかというと地味なSFであるが、ヒューマンドラマとして素晴しい魅力を持った名作だと思う。
 「ひかりのまち」「ピアノ・レッスン」のマイケル・ナイマンの曲が全篇を彩り作品に深い陰影をもたらしている。「CODE46」が好きな方も是非一度鑑賞のほど。

"神が曲げたものを誰が直しえようか?"
否、人間には限りない可能性があるはずなのだ。
(2002年初回鑑賞)

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■「ガタカ」サウンドトラック
ガタカ ガタカ

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