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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「二十世紀少年読本」
2005年 08月 27日 (土) 23:49 | 編集
 二十世紀少年読本

「二十世紀少年読本」  ★★★☆

(1989年日本)
監督:林 海象
キャスト:三上博史、佐野史郎、麿赤児、原田芳雄、秋吉満ちる、大泉滉、桂三枝、鰐淵晴子、片桐はいり、佳村萌

昭和中期の日本が舞台の林海象監督作品。
魅力的なサーカス映像と音楽に彩られたノスタルジックな映画である。
華やかに見えながら禍々しい猥雑さを持ち、それでいてどこか物哀しいサーカスというものが、モノトーンの映像によく映えて退廃的に表現されている。
昭和中期のサーカスやテキ屋、香具師達といった特異な世界を背景にしつつ、映画が描くものは其処に確かに生きた人々の人生と時代そのものなのである。この作品はサーカスを記憶の原風景に持っている人々の運命ドラマであり、決して叶えられなかった夢へのレクイエムと言ってもよいだろう。
主人公仁太が香具師となっていく中盤からのテンポが少し悪いのが残念だが、モノクロのノスタルジックな映像と共に、様々な足枷に縛られながら必死に生きた"美しく哀しき昭和史"的臭いが切なく心を打つ。ぼんやりと闇の中に浮かび上がるサーカス小屋を映し出す無音のラストシーンは、ひたすらに子供の頃の記憶の「あの場所」に戻りたい夢さながらに見え感動的だ。
喝采で迎えられたサーカスに戻ったのは仁太の魂だったのかもしれない。

 二十世紀少年読本@映画生活
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