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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「アメリカン・ビューティ」
2005年 08月 24日 (水) 02:17 | 編集
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アメリカン・ビューティー アメリカン・ビューティー

「アメリカン・ビューティ」 ★★★★☆

AMERICAN BEAUTY (1999年アメリカ)
監督:サム・メンデス
キャスト:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング、ソーラ・バーチ、ウェス・ベントリー、ミーナ・スヴァーリ、ピーター・ギャラガー、クリス・クーパー、アリソン・ジャネイ、スコット・バクラ、サム・ロバーズ

現代アメリカの抱える問題を縮図にしたような映画だ。ブラックな描写の中に人間の欲望が見事に焙り出される。

すべてを手に入れたかのように一見幸福そうに見える家庭、しかし映画はその形骸化した家族関係を余すところなく暴き出して見せる。互いの掛け違えたボタンはもう二度と元に戻ることはなく、やがてそれは崩壊へと転げ落ちるように走り出すのだ。

その破綻は登場人物それぞれが身勝手で、自分の欲望に忠実に生きたが故に迎える、為るべくして為った破綻とも言えるだろう。弱くて狡猾で利己的な人間の醜い部分が実に辛辣に描かれて、娘の友達に夢中になってエクササイズしたり、朝からオナニーして満足げな表情の父親像に象徴されるように、夫にしろ妻にしろ彼等のエゴに満ちた行動の描写は非常に滑稽でコミカルなものだ。しかしそんな光景に心底笑えるかと問われたらそうではない、切り取られた家族の風景はむしろあまりに残酷で悲哀に満ちているからだ。

「解り合えない」、ということは「解ろうと努力しないからだ」などという安直な理解はナンセンスだ。むしろ人には他と永遠に解り合えないことがあると突き付けられる、それでも人は相容れない他と共に生きていかなければならないそんな生き物なのだ。この映画の根底に流れる物は無器用で矮小な人の孤独と欲望なのではないだろうか。
ラストシーンのケビン・スペイシーの顔にほんの少し安らいだ表情を感じる時、「アメリカン・ビューティ」とは一体何だったのかと愕然とさせられる。俯瞰で映し出されるのはアメリカ中流家庭の「日常」という幻想の「美」である。アメリカン・ビューティというバラと引っ掛けた辺り、実に心憎い演出ではないか。

泣き笑いの皮肉な作品だが、喉の奥に引っ掛かって取れない魚の骨のようにいつまでも心の奥底にべったりと貼り付いて残り続ける。サム・メンデスの必見の快作である、大好き(笑。

1999年アカデミー作品賞、主演男優賞及び監督賞、脚本賞、撮影賞
受賞作品。


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