-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「六月の蛇」
2005年 08月 27日 (土) 01:58 | 編集
 六月の蛇

「六月の蛇」 ★★★★

(2002年日本)
製作・監督・脚本・撮影・美術:塚本晋也
キャスト:黒沢あすか、神足裕司 、塚本晋也、寺島進、田口トモロヲ

無味乾燥な都会の生活に埋没して窒息する性衝動。
これは覚醒と再生のエモーションに彩られた原点回帰だ。

 実は本作の公開時、塚本作品は他に「鉄男」しか観た事がなくてしかもそれ程好みでもなかった為、酷く冷めた視線で観たのだ。だがこれは予想を裏切って非常にエモーショナルで美しい作品だった。

 まず一つの世界観が完璧に構築されているという点で悪くない作品だったと思う。
 正直な所、常軌を逸したストーカーの仕業で自己のエロスを解放された夫婦というストーリー展開自体は安直な気がしてそれ程魅力は感じない。
 しかし夫婦は何故性的な欲望を失ってしまったのか、という謎はその冷え冷えとして無機質な都会の生活に封じ込められているのである。抑制されてきた欲望の露呈と共に汚辱に塗れつつ自らを解放するヒロインの姿には、人間の本質的な「エス」の衝動を満たす自我の覚醒を感じずにはいられない。メタファー的な蛇から連想されるのはまさに楽園を追われたアダムとイブの世界だ。塚本監督が描きたかったのはただのセックスレスな夫婦の絆の再生だけではなく、おそらく人間の原始的な姿を忘れて閉鎖されたコンクリートの空間に生きる人間の内なる欲望の発露と解放だったのではないかと思う。そしてその解放の辿り着いた果ては最も純粋で自然な男と女の形であった、という帰結。放たれた「エス」の衝動をここまである意味プラトニックに描き出した世界を自分は他に知らない。この着地点の純粋さが映画全体を云わば浄化するかのように包み込む。だからこそこの作品は残酷なまでに美しいと思うのだ。

 人間の肉体の持つエナジーと命を持たぬ無機物との対照を、真っ青なモノクロームカラーによって美しく映し出した見事な映像表現。それにも増して黒沢あすかの修道女的ストイックさと中性的な容貌と表情が、熱を帯びた汗や雨に濡れてエロティックに変貌する官能。これ等の要素も相まって、単なるエロ映画とは全く違う、リビドーの昇華に連なる寓話性を湛えた作品となっているように感じた。
 塚本の世界観と様式美を如何様に受け取るかによって評価が分かれる映画かもしれないが個人的には傑作と位置付けたいと思う。

黒沢あすか、全裸咆哮も凄いが脱ぐ前の方が官能的だ、この作品は彼女あってこそだろう、実に素晴しい。勿論神足裕司のインパクトは言わずもがなw
第59回ベネチア国際映画祭審査員特別大賞受賞作品。日本国内でもっと評価されて然るべき監督だと思う。

【追記】
黒沢清の「大いなる幻影」を観ていた時、ふとこの作品が脳裏を過ぎった。黒沢監督の描いた近未来では、男と女は中性化して居場所を見失っていた。この「六月の蛇」は無機質な都会生活の中で人間の本能的欲望が埋没している姿を描く。全く異なる作品ではあるがどちらも人間が直面する「生」の危うさというものに肉迫するという意味で共通する部分を感じた次第だ。

塚本晋也監督データ

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