-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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「みなさん、さようなら」
2005年 08月 26日 (金) 20:08 | 編集
 みなさん、さようなら

「みなさん、さようなら」 ★★★

Les Invasions barbares(2003年 カナダ・仏 )
監督:ドゥニ・アルカン
キャスト:レミ・ジラール、ステファン・ルソー、マリ=ジョゼ・クローズ、マリナ・ハンズ
映画情報

「死に方」を考えたくなる映画だ。

余命幾ばくもない元大学教授の父親と最期を看取る人々の心の軌跡を描く。
誰しも愛する者の側で愛した場所で安らかに死にたいと願う気持ちは一緒だろうが、結局「死」に向う時は一人なのだ。生への限りない拘泥と執着、恐怖に苛まれつつ人は「死」をいつかは受容しなければならない。
この世から消える、という事実をいかに受容するか、そしてそれがいかに困難であるか、この映画はひたすらそれをリピートする。
「死」への恐怖、嫌悪、拒否、その時救いとなるものは何か?
それがこの映画で描かれたテーマなのだろうと思う。

女好きの薀蓄親父と周囲との会話が軽妙で明るいのと、疎遠だった息子の父親への対処がビジネスライクなせいもあって、映画の終盤までカウントダウンされていく「死」の悲壮感を観客にあまり感じさせない。
原題「Les Invasions barbares」は「みなさん、さようなら」ではなくて「蛮人の侵入」という意味らしい。(原題もどうかと思うが邦題は正直かなり微妙かなw)
蛮人とは作品の途中で父親が息子に呼びかけるようにおそらくはアメリカ主導の「資本主義」思想でありそれによってもたらされた災厄(9.11テロ)を示唆するのだろう。だが、映画の終盤でそれは「死」にとって替わるのである。言うなれば父親が理想として支持してきた社会主義にとっての「蛮人」である「資本主義」に侵食される日々から最期には「死」という現実に侵されるのだ。ここで見落としてはならない点は息子という存在が資本主義の象徴であるということである。資本主義に凌駕駆逐されていく社会主義という概念が、息子との和解と死の受容をそのまま表象することになっているのだ。この男にとってはそれはまさに蛮族の侵入であり、ある意味とても皮肉な結果であるようにも見える。但しこの父子の関係に我々が少しも悲観的な印象を受けないのは、父親が息子の価値観を受容し理解しようとする愛情や共感をも同時に感じるからであろう。
そして一方でこの作品には、9.11という惨事を産み落としたアメリカ的資本主義への警鐘の意味も込められているように思う。

最期まで「死」は怖いという真実、それを映画は甘ったるいロマンティシズムを排し淡々と描き続け、一人の男の人生の終幕を見届ける。
映画の中盤は薀蓄とシニカルな会話が多く少々テンポも悪いが、ラストの10分は非常に感動的だ。人間としていかに生きていかに死ぬかという、ある意味究極なテーマの作品でもある。

2004年アカデミー賞外国語賞受賞及び2003年カンヌ国際映画祭脚本賞、主演女優賞受賞作品。
「たそがれ清兵衛」とオスカーを争ったこと以外にこの作品についての情報はなかったが決して悪くない作品である。
但しオッサンの喋る台詞は物凄くだし、理屈っぽい言葉遊び的会話シーンが多いのでこの辺は一般的にウケるとは到底思えない。エンタメ度の低さといいカンヌで絶賛というのもよく解る。アプローチの仕方は非常にユニークだが、重いテーマを感情的に流される事なく冷静にそして丁寧に描いた佳作だろう。


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