■ Title Index : all ア カ サ タ ナ ハ マ ヤ ラ ワ A-Z・数字 監督別 |
■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2006年
01月
08日
(日)
09:55 |
編集
ネタバレ有
これも再鑑賞、「GO」を観直したのでちょっと行定監督の過去作品をまとめて観ている状態。以下の感想は以前のを書き直しました、☆も追加w。
本作のモチーフは姉弟とその父親の間に秘められた愛憎関係である。性的虐待と近親相姦という非常にナイーブな問題を、今にも壊れそうな張り詰めた感情の交錯によって淡々と描き出す。ひりひりとした痛みに支配された全体のトーンは非常に静かで内省的。破滅的な予感を秘めたテーマに叙情的な映像と音楽がよく合っていたし、ビデオカメラによる揺れ、スローなスピードによる残像の効果等、映像の個性は好き嫌いあるだろうが不思議な魅力があって美しい。
小説に自分の過ちを懺悔のように記す姉とプールに潜る弟、それ等は苦悩と葛藤の補償行為でもある。潰された虫の屍骸が残る壁はいつまでも削除できない過去に苛まれる姉と弟の痛みを具現するメタファーとして我々の心にも染みの様に残るのだ。
そして映画は弟が姉の小説を読み本を閉じるシーンで終幕を迎える。彼女にとっての弟とは、父親との性行為の唯一の目撃者でもあり近親相姦の相手である。云わばその存在自体が彼女の傷にもなっているということに着目すべきだろう。「閉じる日」が彼女自身の或いは弟の「人生の呪縛を解く」為に書かれたものと考えれば、本作は彼等の心の清算と懺悔、捨て去る事のできない愛憎を描いた作品として観ることができるかもしれない。
意味深なストーリーなのだが、役者の演技が素人っぽいのと、オチの捻り具合がまるでよくある推理小説のように感じられるのはマイナスポイント。あのラストの見せ方によって真実と虚構の入り混じる姉弟の精神世界がいかにも絵空事のように白々しいものになってしまう。取り様によっては近親相姦も殺人も総ては虚構の世界のエピソードと判断できなくもない、まるで「スイミング・プール」の収束のようでもあり、映画の方向性としてはエンディングで損をしていると思う。
このようなどこか迷いを感じさせる作風やインディーズっぽい映像の雰囲気も評価の分れるところではあろうが、微妙な感情の揺れを繊細に描くセンスはさすがだと思う。
ま、パンツは何もズボンの上からはかなくていいしなw。
行定監督の以前の作品と言えば、「贅沢な骨」の狭小ながら濃厚に煮詰めていくような世界観も同様、内向きのベクトルで人間の感情の襞を丁寧に描くのが非常に上手いという印象だったのだが、最近の作品は目線の高さが変わったように思う。「世界の中心で~」以降は商業主義に乗っ取られたあざとさをその作品に感じてしまうのは自分だけだろうか。








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