■ Title Index : all ア カ サ タ ナ ハ マ ヤ ラ ワ A-Z・数字 監督別 |
■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2005年
08月
24日
(水)
01:53 |
編集

「アカルイミライ」 ★★★★★
監督脚本:黒沢清
音楽:PACIFIC231
キャスト:オダギリジョー(仁村雄二)、浅野忠信(有田守)、藤竜也(有田真一郎)
⇒ 公式サイト
⇒ エンディングテーマ、THE BACK HORNの「未来」を試聴する
この社会は他人と解り合おうとしない人間たちが担うのか。
“明るい未来”ではなく“アカルイミライ”。黒沢清が放ったサインは、どうしようもない現実を無造作に映し出して、我々の未来に一石を投じる。
独特のざらついた映像と状況描写を淡々と重ねるテンポ。
観る度に以前とは少し違った感情が湧き上がるこの不思議な映画はおそらく様々な解釈ができる映画の一つだろうと思う。「大いなる幻影」と「回路」でほんの少し見えたヒントは、自分の殻に閉じ籠る人間たちで溢れた末期的な未来だ。
オダギリジョー扮する仁村雄二は、他人と解り合おうとする器用さを手に入れることができずに、焦燥と閉塞の日々を送る世代の象徴として登場する。これほど若さが抱える無知や迷いを鮮烈に描き出した作品を自分は他にはあまり知らない。
映画はそんな若者を大人の対極に置いて、理解し合えない世代間の深い隔絶を語ってみせる。埋めようのない妥協できない距離、云わば永久に離れ続けるベクトルのようなものが確かに存在することを観る者に強く印象づけるのだ。
それ故に登場する「若者」という言葉で括られた彼等の行動は時に不可解であまりに衝動的に映る。殺人も自殺も盗みも何の衒いもなく語られ、その行動理由も酷く刹那的に描かれている。おそらくそれはオトナの世代からの「理解できない若者」への視線を表現するものでもあるだろう。
そしてその象徴こそが映画の中に登場するクラゲだ。
ふわふわと浮遊して捉えどころのないクラゲは相手構わず他を攻撃するが、与えられた環境(真水)に慣れて生きることもできる。あたかも既成のアイデンティティーに押し黙って順応し、眼前に広がる漠然とした未来をただ受容して生きる、没個性の若者のように。
「若者」の理念を欠いた行動描写や、クラゲのような象徴的モチーフ、或いは説明的な台詞や描写のない作風は、この映画を理解できないと感じる所以でもあろう。有田(藤竜也)の視点で作品を眺めてしまえば、幼稚で愚直な仁村に共感できないとしてもおかしくはない。だが、海を目指して進む真水に慣らされた大群のクラゲ達や、アンテナを引き摺り下ろす仁村の行動は、言わば与えられた庇護からの自己覚醒を意味し、他人との関りという人が生きる為に永遠に続くテーマに繋がる、作品中の重要なエピソードともなっているのである。
用意されたもの、即ち真水やアンテナはいつかそれを乗り越えねばならない、あるいはそう気づかなければならない。その認識と自己内部における破壊の後にしかおそらく人は前には進めない。雄二にとって、いや、他人と解り合おうとしない総ての人間にとって脱却と覚醒がいつかは必要なはずなのだ。
しかし黒沢清は、主人公が「行け」のサインに気づき、アンテナを引き摺り下ろす行為に到るだけでこの映画を閉じようとはしないのだ。
ラストシーンでカメラは、同じチェ・ゲバラを着たステレオタイプな少年達の闊歩する姿を捉える。彼等はまだ真水の中で曖昧な未来に向かって生かされているだけの存在なのかもしれない、少年達がゲバラを脱ぎ捨てようとそうしまいと未来は総ての若者にやってくる。
未来は拓けているのかそれともそうではないのか、「ニンゲン合格」で聞いた「俺存在した?ちゃんと存在した?」という台詞を思い起こしながら、我々は今一度黒沢清の問いかけを反芻する。振り払えない不安を抱えたまま、そして自分の立ち位置を逆説的に考えずにはいられないのだ。
お前は今どこに立っているのか?
そしてどこに行こうとしているのか?
「アカルイミライ」は今でもブログの名前にしたいくらい好きな映画だ。だが好きなあまり思うことを言葉にし難い、そしてこの映画の一体どこまで自分が理解できているのかも解らないそんな歯痒さをいつも感じる作品でもある。正直感想の一つも全く納得のいく様に書けないが一応今の自分の理解の範疇はこんな程度なのだ。
因みに2回目の感想「アカルイミライ再考」は此方ですw
◆参考資料:黒沢清インタビュー
◆当ブログの黒沢清監督作品感想LINK
・ LOFT ロフト ★★★
・ 楳図かずお恐怖劇場 蟲たちの家 ★★★
・ 回路 ★★★☆
・ 大いなる幻影 ★★★☆
・ ニンゲン合格 ★★★★
・ CURE ★★★★








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で、サントラと主題歌が凄くいいのでご紹介しておきます。
■アカルイミライ サントラ

■主題歌「未来」収録アルバム

THE BACK HORNの手がけた主題歌「未来」が収録されたアルバム。
これは激お薦めの一枚です。詞の世界も映画と物凄くシンクロするし破壊的爆音ロックな彼等の音がこの映画には何故かぴったりはまる。
⇒ アカルイミライの映像も観られる「未来」のPV試聴する
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