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-何の参考にもならない映画評-
The Door into Summer
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 ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ 


「ハウルの動く城」
2005年 08月 26日 (金) 01:21 | 編集
ハウルの動く城 ハウルの動く城

「ハウルの動く城」 ★★★

HOWL'S MOVING CASTLE(2004年日本)
監督:宮崎 駿
キャスト(声):木村拓哉、倍賞知恵子、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、伊崎充則、大泉洋、大塚明夫、原田大二郎、加藤治子
原作:魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉
公式サイト

2005年記念すべき一発目劇場鑑賞作品。
評価が割れているらしいので実施検分ということでw。

原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」。別にこの原作自体は難解ではないのだろうが、映画の方は明らかに説明不足、脚本の練り不足を感じる作品である。観客は今までの宮崎アニメと違う不親切さにおそらく途惑うことになるだろうし想像力フルスロットルでの鑑賞を余儀なくされることは間違いない。
全体的な印象としては、やけにメッセージ性が強くて説教臭い大作調だった最近のジブリ作品とは違って軽いイメージ。別にそれもたまにはいいと思うが、この曖昧なテーマ性、整合性に欠けたストーリー展開、特に後半の性急な展開による伏線の中途半端な回収っぷりは褒め称えられたものじゃない。

とにかく非常に掴み難い作品ではあると思う。それはこの映画の主題が今までのジブリ作品より見えにくいからだろう。何を鑑賞者に訴えたいのか、それを掴もうとした瞬間にはぐらかされるようなそんな違和感を鑑賞後に感じてしまうことは確かなのだ。
ジブリ作品を振り返ってみれば、人間と自然の共存・調和、反戦、主人公のアイデンティティの確立と成長等のメッセージ性の強いテーマが並ぶ。その中に誰にも愛されるキャラクター造形や独特な浮遊感、そして無国籍なノスタルジーを混在させつつ最終的にはストーリーを高みへ昇華させるという不思議なごちゃ混ぜ感が絶妙だったと思うのだ。言い換えれば子供の視点でも十分見られる単純明快な世界観と大人の目にも耐え得るテーマ性を同時並立させる上手さでもある。
では「ハウル」の場合はどうか。
そういう一貫したテーマ性は極めて希薄だ。一つには「老いと恋」というテーマがあると思うが、それは確かに90歳の少女と美しい魔法使いの青年との恋という設定や、「美しくなければ生きている意味がない」「年寄りのいいところは・・・云々」という表現から汲み取れる。しかしそこにまるで付足しのように反戦的なメッセージが盛り込まれることによって、テーマが断片的で散漫になった印象は拭えない。脚本の中でその動機づけが示されていないハウルの唐突な反戦の台詞など、あれはなくても良かっただろう。(そもそも原作にはない部分らしいが)
またもう一つ考えるとすれば「心臓(=「魂、心」)を取り戻す」=「人を愛する」というハウルの心に肉迫する視点だろう。それがソフィーが直面する恋愛感情とリンクされて明確に表現されていたならば、また違った作品の魅力が醸成されていたのではないかとも思う。まぁこれだと作品的にかなり重くなって子供向けじゃなくなるかもしれないが。

映像的な部分で言えば絵面は平面的で汚い、バックの風景描写もはっきり言って全然良くない。ナウシカやラピュタ等で快感を感じたあの浮遊感も物足りない、で、ハウルだけは異様にカッコイイというそんな有様。今までの作品に比較すると質的には明らかに見劣りする。
また久石譲氏の音楽は今回も良かったが、倍賞さんの声で若いソフィーははっきり言って違和感アリアリ、ムリだ、俳優の声にそれ程拘る意味が解らない。
そういうマイナス要因を加味しても、物凄い感動の大作ではないラブストーリーとして観れば言われている程は悪くない作品だと思う。いやむしろこの作品は素直にラブストーリーとして観た方が納得できるかもしれない、そしてくれぐれもジブリ作品のネームバリューに過度の期待を抱かないで観ることだろう。

【追記】結局「ハウル」は1500万人を動員し興行収入は200億円というぶっちぎりの一位という結果を残している。凄いねジブリ。
だが宮崎アニメだというだけで無条件で絶賛したりする風潮がある今、ジブリ作品を貶したり「意味不明」なんて今さら言い辛い、そんな空気もあるように感じられてならない。そろそろそういうパブロフの犬みたいな右に倣えはやめませんか?(爆
因みに千と千尋がベルリンで賞を獲ろうが全米ではインディーズ扱いの公開だったこともあまり知られていないようだ。興行成績についてはWorldwideBoxofficeなどでも拾える。


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