■ Title Index : all ア カ サ タ ナ ハ マ ヤ ラ ワ A-Z・数字 監督別 |
■ ★評価別Index : ★★★★★ ★★★★ ★★★☆ ★★★ ★★☆ ★~★★ |
2005年
08月
25日
(木)
23:57 |
編集
【ネタバレ有】
男と女の根源的な愛の形、或いは男という生き物の究極的な欲望を捉えたキム・ギドクの怪作である。
ストーリー自体は非常に独特な暴力描写によって展開し、気に入った女子大生を罠にはめて娼婦にさせるハンギという男が物語の核となる。刺される切られるボコられるなどの暴力シーンに目が行きがちだが、「悪い」とは、果たしてどう悪いのか?この男の秘める謎こそが映画のテーマと直結するものであろう。実に魅力的なハンギという男のキャラクターは観客の心を捉えて放さない。
男は凶暴なチンピラらしいのは確かだが、全く言葉を発しないし女にほとんど手を触れない。咽喉の傷のせいで口がきけないのか、それも映画の中では語られない。鏡の向こうからじっと女を覗きひたすら手放したくないらしい。この期に及んでプラトニックなのか、それともEDなのか、女に対するトラウマがあるのか、おそらくソナと肉体的に結ばれない理由が何か彼の方にある、ということが次第に推測できる。ただそれはあくまでこちらの推測であって、写真の切れ端で朧ろげに見えるハンギの過去にしても不確かなものでしかない。
どこか自分を卑下しているような自虐的な表情といい、ハードボイルドで不器用そうな雰囲気といい、終いにはそれが魅力的に見えてしまう。「悪い」という表現は狡猾さや凶暴性、残酷非道の意味の「悪さ」ではなく、この男が放つ強烈な魅力そのものなのではないかとさえ感じてしまうのだ。
しかしながら映画は観客に最小限の情報しか与えない。ハンギという男の全くユニークなキャラの演出は確かに興味深いが、これだけ説明不足な展開で尚観る者が引き込まれてしまうのは、強引なまでの脚本の力と潔くスタイリッシュな映像の力に他ならないだろう。
言葉を失った男と不条理に陵辱された女、ラストシーンの穏やかな空気の中に男と女の原風景のようなものさえ漂わせるギドクの手腕に圧倒される、そんな作品だ。
終わってみれば非常に純粋な愛情、言い換えれば人間の性(さが)が根底にあるドラマだったように思う。二人にとってはあのエンディングはある種のハッピーエンドなのかもしれない。
ちょっと劇画タッチだけどなかなか味のある面白い映画だと思う。
因みにエゴン・シーレの絵ってゾンビとかバタリアン普通に思い出すの俺だけ?w








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